資本主義とAI

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近年、資本主義に疑問を呈する意見が多く聞かれるようになりました。資本主義においてはコストを外部化し、得た利益でごく一部の人に資本が集まる構造があることが問題視されているのです。

この外部化では、先進国がコストを開発途上国に転嫁するだけでなく、環境汚染の問題を後世に時間的に外部化し、気候変動が問題となるなど、世界は大きな課題に立ち向かっていると言えます。

同時に世界では2015年に国連が策定したSDGsに同調する声も大きく上がり、まさに社会のあり方が大きく変わろうとしていると言えるのかもしれません。

この記事では、資本主義のデメリットが批判されることが多くなった今、AI(人工知能)の技術がどのような影響を与えていくのかを考察してみます。

AIが社会に与える3つの負の影響

AIによる資本の集中

2010年代に急激に発展したAI技術は、画像処理音声認識などの精度の高さが注目され、さまざまな分野で活用が進んでいます。現に、多くの人が音声認識や画像認識などAIの活用シーンに触れたことがあるでしょう。

特にGoogleやAmazonをはじめとした国際的なテックジャイアントは、得た利益の一部をAI研究に積極的に投下し、さらに自社が蓄積した膨大なユーザのデータを活用することで、さまざまなサービスにAIを取り入れ、そのサービスをさらに成長しています。

ここでキーワードとなるのが「Winner takes all」という言葉です。

AIの分野では、ビジネスでより多くのユーザを獲得したWinner(勝者)が、より多くのデータ、資金を得て、さらに自社のサービスを成長させ、さらに多くのユーザを得るというサイクルが生じやすくなります。

これによって、勝者と敗者の差がどんどん開いていき、Winner(勝者)がtakes all(すべてを取る)構図が出来上がりやすくなります。

また、GAFA(米国の主要IT企業であるGoogle、Amazon、Facebook、Appleの4社の総称)をはじめとしたテックジャイアントは、過去に繰り返しM&Aを繰り返し、さまざまなサービスや人材を吸収することで、さらに拡大し、AIの開発力、サービスのUXを向上させています。

例えば売上世界一を誇るAppleは、もともとはコンピュータの領域で商品を展開してきました。そこから、iPhoneの発売を契機に経済圏を広げ、腕時計(Apple Watch)や音楽配信(Apple Music)、音楽機器(AirPodsシリーズ)などにサービスナインナップを拡大させて居ます。これらはiPhoneを通してスムーズに活用することができ、Appleは人々の生活のさまざまなシーンを抑えている他、今後は自動運転やスマートホームなどの領域でも、さらにサービスを拡大させていくでしょう。

これにより膨大なデータを蓄積するAppleは、2020年11月、独自のチップである「M1」を発表しました。M1チップはApple Neural Engineにより画期的な機械学習性能を発揮します。その結果、CPU性能は最大3.5倍、GPU性能は最大6倍、機械学習では最大15倍高速(公式)になり、iPhoneの中でさまざまなAIが性能を発揮することができるようになります。これによりさらにAppleのサービスのUXが向上させれば、さらなるユーザ増加を招くことでしょう。

このようにAIは、資本の集中を引き起こす作用があり、AIによって得た利益をどのように扱うのかなどの議論が求められているといえます。

仕事を奪っていくAI

AIによって、資本の集中が進んでいく中、一般的にAIは今後、労働者の多くの仕事を奪っていくことが危険視されています。

実際、現状のAIが担える業務は人間が担う仕事の一部でしかないことや、日本などの先進国では生産人口が減っていき労働力不足をカバーする必要性が高まることから、短絡的にこの意見に同調することは危険といえます。

しかし、長期的に見れば、今までに機械化が難しかったような業務がどんどんと機械化し、人間への依存性が低下していくことは間違いないでしょう。そうなれば、分野によっては従事する人が必要ない時代になるかもしれません。

多くの仕事は、さまざまな業務で構成されています。その業務は以下の図のように、一つひとつの作業に分解することができます。

現在のAIは特化型AIと呼ばれ、現状担えるのは一部の作業でしかありません。言い換えれば、AIが担えるタスクが大部分を占めている業務は今後、社会の中での必要性が低下していくことが予想されます。特に重要なのは複雑な意思決定が行われる仕事ほど、AIによって代替が難しくなります。

多くの業務では、定型的な作業を積み重ねながらも、意思決定を行うことが多くあります。

一般的に機械に代替されやすいとされるスーパーマーケットの店員を例に考えてみましょう。

  • 仕事
    ・店員
  • 業務
    ・接客業務
    ・売り場管理業務
    ・事務業務
  • 作業
    ・接客業務
    – チェッカー(レジ打ち)
    – お客様対応
    ・売り場管理業務
    – 品出し(陳列)
    – 消費期限のチェック
    ・事務業務
    – スタッフの勤怠管理
    – 予算(売上)管理
    – 受発注

上記のうち、多くの業務はロボットやAIが実用化することで代替されるでしょう。もちろんお客様対応などの業務は、人間同等の音声応答を行うAIの普及がまだ進んでいないため、実用化までしばらくかかってしまうでしょう。しかし、OpenAIのGPT-3(Generative Pre-Training-3)をはじめ、人間の言語を処理する技術の発展が進んでおり、今後はスーパーの店頭で人間への依存性は大きく低下していくでしょう。また、この潮流はAmazonのレジなしスーパー「AmazonGo」だけでなく、九州地方を中心に展開するスーパーマーケットチェーン「TRIAL」などからも感じることができます。

同様に、仕事を業務、作業に分解することで、その職業が機械に代替されるかどうかを予想しやすくなります。

また、定職についていた低所得者層が職を離れたり、給料が減少してしまった場合、どのように格差を是正していくのかも議論が必要です。

AIが環境問題に与える影響

資本主義の行き過ぎを指摘する声の理由としてあげられるのは気候変動の問題です。現在社会では、石油などの有限な化石燃料を掘り起こし、二酸化炭素を排出して温室効果を高めることで多くの気候変動を巻き起こしています。そして、この影響を受けるのは、10年後、20年後の私達です。

では、なぜAIは環境問題に影響を与えるのでしょうか。それはAIの開発過程の消費電力の問題です。2020年2月、WIREDはAIの電力消費量に関して記事で指摘しています。

AIの研究を行うアメリカの非営利団体「OpenAI」は2019年12月にルービックキューブを完成させるアルゴリズムを発表しました。同記事によると、このプロジェクトでは、1000台を超えるコンピュータを必要としたほか、大量の計算をするグラフィックチップを稼働させるマシンが1ダースほど必要だったといいます。

このプロジェクトでは約2.8GWhの電力が消費された可能性があるとDetermined AIのCEO エヴァン・スパークス氏は指摘しています。

上記のような複雑な処理を必要とするAIプロジェクトばかりではありませんし、現在、私達の生活の中では、まだAIの存在を感じる場面は多くありません。しかし、多くのサービスの中でAIが使われている他、世界でも研究開発が積極的に行われています。膨大な人口を有する中国のAI開発のスピードもものすごく、AI開発に使用される電力量を把握し分析することが求められているといえます。

一方でAIを活用することでプラスな影響も考えられます。その1つが、AIによる発電量の最適化などです。AIによって、電力の使用量を予測することで、従来に比べて効率的に発電することが可能になれば無駄な発電量が少なくなるかもしれません。

また、近年注目される再生可能エネルギーにおいても、効率的な発電方法の探索をAIが担うことで、石油などの化石燃料を使った発電への依存率を下げることにつながるかもしれません。

必ずしもAIが悪者なのではなく、社会に与える負の影響を理解しながら、生み出すメリットも認識して活用を進めていくことが重要です。

まとめ

今回は、あえてAIが社会に与える負の影響についてまとめてみました。AI技術は諸刃の剣です。短期的には社会の変化が少なくても、長期的に見ると社会のあり方を大きく変革してしまいます。

特に現在問題となる経済格差などは、これからさらに資本主義が拡大し、その拡大にAIの影響が上乗せされれば、さらに問題が深刻化してしまうでしょう。

まだ時間があるからこそ、建設的に議論を進めていく必要性が求められています。

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WRITER

 

  Asei AI/DX専門ライター「Asei」

AIやDXなどが専門のライター。累計執筆数500本以上。 「曖昧な技術を具体的に」を心がけ、トレンドに合わせてさまざまな視点から発信します。フリーのフォトグラファーも。

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