AI導入プロジェクトと製品開発ープロジェクトに必須なドキュメント

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Photo by Nikita Vantorin on Unsplash

弊社のデータデザイン部では、お客様のAI開発と並行して、内部効率化ツールや外販用のSaaSなど、ソフトウェアプロダクトを内製しています。 本稿では、この経験から得られた、AIプロジェクトを推進する上でのノウハウを共有します。

はじめに

こんにちは。データデザイン部でプロダクトマネージャーをしております金岡です。弊部では、お客様のAI開発と並行して、内部効率化ツールや外販用のSaaSなど、ソフトウェアプロダクトを内製しています(SaaSはまだ非公開のものも!)。多くの場合、AIやデータ処理といった複雑な仕様が絡みます。またサービスとして開発する前に、そもそもAIの事前検証が必要な場合もあります。これらは非常に難度が高く、普段から様々なツールを利用し試行錯誤しながら進めています。

もともと弊部ではお客様のデータをお預かりしてオーダーメイドに機械学習モデルを開発するという事業を行っていました。 弊部で行っている内部での開発スキームはお客様のAI/機械学習モデル導入プロジェクトでも大いに役に立つのではと思い、今回のブログでその一部を紹介します。そこまで特別なことはしていないのですが、円滑にプロジェクトが進められるきっかけにはなると考えます。

AIプロジェクトはほぼソフトウェアサービスの開発が必要になる

まず、そもそも事業会社でAI/機械学習を導入するのはなぜなのでしょうか。

業種によって千差万別かとは思うのですが、AI導入のゴールを類型化すると

  • お客様に全く新しいサービスを提供したい(新規顧客サービス)
  • 既存のサービスのサービスレベルを上げたい(顧客サービスのエンハンス)
  • 社内の非効率なオペレーションを根本的に変えたい(新規社内ツール)
  • 既存の社内システムの一部を自動化したい (社内ツールのエンハンス)

多かれ少なかれ、こういった四象限のマトリクスで分類できるのではないでしょうか。

AIはその単体で動くわけではなく、API化して他のシステムとやりとりしたり、GUIをつけてユーザーの入力を受け付け、結果を出力する必要があります。 つまり巷で「AIプロジェクト」と言われているものの多くは「AIのサービス化/既存サービスへの組み込み」がゴールであり、「ソフトウェアプロダクトの開発」の一種であるといえます。

AIの開発過程では「モデルの実行結果のレポート」を作ることがありますが(弊社も行います)、これはあくまで大きなプロジェクトのゴール達成のため必要なことの一つです。真新しい技術であるAIを活用するので、目線がAIにのみ集中しがちですが、プロジェクト全体を常に意識することが極めて重要です。

目的を見失わないテクニック:DIVA+PRD/One Pager

AI導入プロジェクトは全体像をみてみましょう。様々な微細な違いはあると思いますが、このような流れが事業会社におけるAI導入プロジェクトとなります。

…非常に大規模プロジェクトになりそうですね。。 AIプロジェクトは多くの場合、個々のプロセスに注目しすぎて本来の目的が失われ、迷走することで失敗してしまいます。 今回はプロジェクト初期にこの「目的」そして「プロジェクト全体のポリシー」を整理するテクニックとして「DIVA」と「PRD/One pager」をご紹介します。

DIVA

DIVAとは、データ分析のフレームワークです。AI導入以外のアドホックなデータ分析などでも用いられます。 以下の4つの頭文字をとって「DIVA」です。

  • DATA:どのようなデータを使うのか
  • INFORMATION:データから取得できる「情報」は何か
  • Value:誰がどう幸せになるのか
  • Achievement:経営的なメリットは何か

新規でAI導入を検討し始めた場合、なんらかのデータと解決したい課題(もしくは創造したい価値)がぼんやりとある状態かと思います。DIVAフレームワークは、AI導入検討初期の解像度を高めてくれます。 例えば、「コールセンターのデータとAIを使って業務改善」というアイデアがあったとします。これだとぼんやりとしすぎてプロジェクトが開始できる解像度ではありません。まずはDIVAで明確化します。

  • DATA(どのようなデータを使うのか):「コールセンターの質問と回答のペアデータ」
  • INFORMATION(データから取得できる「情報」は何か):「質問に対する回答の傾向」
  • Value(誰がどう幸せになるのか):「オペレーターが質問カテゴリを事前に予測できる」
  • Achievement(経営的なメリットは何か):「顧客満足度の向上およびオペレーターの教育コストの削減」

ここまで見えると、「目的変数=質問カテゴリ(ラベル)」「説明変数=質問」ということが明確化でき、想定される入力と出力がおおよそ把握できます。 社内にデータはあるか、このINFORMATIONが取れる状態なのか確認できます。 そしてAI開発におけるユーザー価値や経営的インパクトの試算のきっかけにもなります。 DIVAの精緻化はそもそもプロジェクトを始められそうか、始める価値はあるのか最初の関門となりそうです。 ここでデータが全くない!/入手できる状態でない!となることもしばしばあるため、本格的なプロジェクト組成の前にDIVAの確認は重要です。

ちなみに弊社では「AI活用診断レポート(旧:データアセスメントレポート)」という、「そもそもこのデータでAI開発可能か」を診断するメニューも保有しています。 このような手段を利用することも視野にいれてもいいかもしれません(唐突な宣伝)。

では、これでAI導入プロジェクトを始めようとなったとしましょう。 ここでValueを確認します。「オペレーターが質問カテゴリを事前に予測できる」とあります。 これはオペレーターがなんらかの方法で質問カテゴリを見るシステムがあることを示していますが、実はこれではゴールが不明確です。ここでもう一歩プロジェクトのゴールを深掘りするために「PRD/One Pager」というドキュメントを追加で作ります。

PRD/One Pager

PRDとは、「Product Requirements Document」つまり製品要求仕様書です。ソフトウェアプロダクトやサービス開発の現場でよく用いられる、製品開発の前段階でまとめるべきドキュメントです。One Pagerは重厚長大になりがちなPRDを簡略化して「1枚のドキュメント」にまとめたものです。 盛り込む内容は様々な流派がありますが、有名な具体例として「Product Hunt」のPRDの内容を参照したいと思います。

  • 1.Intro & Goal
  • 2.Who’s it for?(誰のためにあるか)
  • 3.Why build it?(なぜ創るか)
  • 4.What is it?(どういうものか)
  • 4.1 Glossary(用語)
  • 4.2 User Types(ユーザーの種別)
  • 4.3 UI/Screens/Functionalities(想定されるUI/画面/機能。図というよりも機能を文章で書いておく)
  • 5.Brainstormed Ideas(実装するか未決のアイデア)
  • 6.Competitors & Product Inspiration(競合や影響を受けたプロダクト)
  • 7.Seeding Users & Content(初期ユーザーと獲得戦略)
  • 8.Mockups(画面のワイヤーフレームなどを貼る)
  • 9.Tech Notes(技術仕様、クラス図の案など)
  • 10.Go to Market(初期のマーケティング戦略)
  • 11.Post-Launch Marketing(ローンチ後のマーケティング戦略)

社内ツールでは不要と思われるものがありますが、最低限1-4くらいを埋めて、AIプロジェクトに臨むことをお勧めします。 試しにコールセンターの例で1-4を簡単に埋めてみます。

  • 1.Intro & Goal
    • サービス品質向上のためにコールセンター拠点を拡大予定
    • 一方でコールセンターは新規の質問に対して対応する回答を見つけられるようになるまで属人的なスキルがあり、急速な拡大を実施すると教育リソースの逼迫、顧客満足度の低減を招く
    • そこで過去のコールセンター対応実績のデータから、質問に対する回答カテゴリを提案するAIシステムを導入し、教育コストの低減と顧客満足度の維持向上を目指す
  • 2.Who’s it for?(誰のためにあるか)
    • オペレーター
  • 3.Why build it?(なぜ創るか)
    • コールセンターは新規の質問に対して対応する回答を見つけられるようになるまで属人的なスキルがあり、急速な拡大を実施するとSV1人あたりの新人担当者がX人となり、顧客満足度がY%下がる恐れがある(過去同様のシチュエーションでの実績値)
    • 顧客満足度の低い顧客はZ%で当月中の解約を選択し、収益にもインパクトがある
    • そのためAIによるシステムを導入することで、拠点拡大と顧客満足度の維持向上を目指す
  • 4.What is it?(どういうものか)
    • 荷電内容から、対応する回答カテゴリを提案するAIシステム
  • 4.1 Glossary(用語)
    • SV:スーパーバイザー…
  • 4.2 User Types(ユーザーの種別)
    • 管理者ユーザー
    • 一般オペレーター
  • 4.3 UI/Screens/Functionalities(想定されるUI/画面/機能。図というよりも機能を文章で書いておく)
    • 荷電通知画面
    • 質問カテゴリ一覧画面:荷電内容から各FAQへのリンクとなっている回答カテゴリボタンをディスプレイに表示
    • ・・・

ここまで情報があれば、ソフトウェアとして開発することまで見通して、AI開発することを一定程度検討できそうです。

ちなみに、弊社内で製品開発を行う場合はおおよそこれらに近い内容をまとめているのですが、加えて、以下を明言します。

  • Critical requirements(製品での重要な要求事項)
  • not requirements(やらないこと)

例えば「まずはA拠点のみでの導入テストを行うためX月でのローンチが必須となる」「まずはベータ版の社内リリースを目指すため初期の分類は完璧でなくても構わない」といった形です。すると、目的を達成しつつ重要な要求事項を満たすために優先順位を整理することができます。

AIプロジェクトにおいて、タスクはデータ調達〜モデル検証〜システム開発と膨大です。優先順位づけのためには、プロジェクト初期にこういった目的やプロジェクトでのポリシーを明確化することが重要です。

まとめ

本稿では、DIVAとPRDを用いて、AI導入プロジェクト初期のプロジェクト全体の情報を整理する方法をお届けしました。AIプロジェクト初期に目的、ゴール、ポリシーを設定できると「いまこのデータ調達は長いステップのうちのここだな」「検証結果が現行データだと許容範囲に達しないのでここでいったん終了し、別手段を講じよう」といった判断につながります。

また、弊社はAI開発にフォーカスしたベンダーですが、AIプロジェクトの一部をアウトソースする場合、データのある既存システムの保守担当、外部のベンダー、社内外ユーザーなど、様々なステークホルダーが発生します。ここでも、プロジェクトの共有見解のためには今回のようなドキュメントは重要になってきます。

AI導入はタスク量・ステークホルダーが多くなりがちで、かつ不透明な部分(モデルを作るまで性能が確認できない)が多くなります。しかし情報を整理し、適切に優先順位をつければ、恐れることはないのかなと思います。もしAI導入でお困りのことがございましたら、お気軽にご相談ください!

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WRITER
Ryo Kaneoka

プランナー

金岡   亮 Ryo Kaneoka

複数の新規AI・データ活用サービスの企画およびPMを担当する。大手広告代理店様/メーカー様のビッグデータ活用の支援等の実績あり。   JDLA Deep Learning for GENERAL 2018、上級ウェブ解析士

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