AIは仕事を奪わない、DX時代の業務設計(後編)

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2010年代後半にAI(人工知能)技術への注目が高まったのは、ディープラーニング技術の急激な成熟が背景にあります。特に画像認識技術が高まったことや、将棋や囲碁、オセロなどの完全情報ゲームにおいて、人間最強のプレイヤーを破ったことなどを背景に、その可能性に目をつける人が増え、広くビジネスでの活用も検討されるようになりました。

一方で、同時に語られたのは「AIの脅威性」です。従来の技術では成し得なかった認識や分析が可能になり、機械学習(ディープラーニング)技術の特徴を知らない人からは「AIが人間の仕事を奪う」と危惧されるようになりました。

2021年現在、AIへの注目はやや落ち着いてきたと言えます。あわせてデータやデジタル技術を総合的に活用し、DXを推進しようという気風が高まっているとも言えます。

この記事では、あえて「AIは仕事を奪わない」をテーマに、DX時代に求められる私たち人間の業務設計について解説していきます。

これからの仕事はどう変化させていけばいいか|意思決定の重要性

ここまで、仕事と業務、作業を分別する重要性を解説した上で、人工知能によって仕事がどのように変化するかを解説してきました。

それでは、これからの私たちはどのような方向に向かってキャリアを歩んでいけばいいのでしょうか。

まず、理解しなくてはいけないのは、現在のAIはあくまでも作業を効率化する道具であるということです。「AIが〇〇をする」という表現をよく見かけますが、これは正しくありません。「AIを使って〇〇をする」という認識を持たなくては、AIを適切に活用していくことはできません。

業務を効率化すれば、私たちの仕事の生産性は飛躍的に向上します。単純な作業に時間が奪われることなく、方向性を決める意思決定業務に割ける時間が増加するのです。

一般的に私たちは、社会に出てからすぐは「プレイヤー」と呼ばれ、その企業の作業をこなすことが重要です。そして、昇格していくと同時に「マネージャー」になり、意思決定をし、方向性を示す重要性が高まります。

これからはプレイヤーをAIで代替し、プレイヤーとしてのAIを管理するAIマネジメントが重要になります。総マネージャー社会に近づいていくと言っても過言ではないでしょう。

複合的な技術を俯瞰的に見る癖を身につけよう

仕事と業務、作業を分別する重要性を解説した上で、人工知能によって仕事がどのように変化するのかを解説してきました。ここまでは、話をわかりやすくするために、人工知能(AI)という表現を活用してきました。

しかし、AIだけでなく周辺技術もあわせて俯瞰的に理解することで、業務の代替はさらに迅速に進みます。

下の図をご覧ください。人間で言うならば、AI(ニューラルネットワーク)が担っているのは脳の部分です。人間で言う五感はそれぞれのセンサーで代替され、腕や足はロボティクスやタイヤなどで代替されます。

パソコンの操作の作業を代替する上で手は必要ありませんが、手を動かすように入力などの操作代替する技術はRPAと呼ばれます。RPAは、Robotic Process Automatinoの略で、PC上で行う繰り返し作業や、特定のルールに則って行われる作業を代替する技術です。人間でいうならば、熱いものを触ったらすぐに手を引っ込めてしまうような、ルールに則った脊髄反射を担う部分とも言えるでしょう。

先述の経理担当の領収書の処理業務においても、領収書にかかれているテキストを認識し、入力する作業では、テキスト認識の部分のみを担うのがAIで、テキストを自動的にエクセルなどに転機するのはRPAの技術の役割です。

ここまででわかるように、AIに作業が代替されるといいますが、AIだけでなく、その周辺の技術を組み合わせることで、その作業の代替を可能にしているのです。

<図1>

DXで仕事はどう変わるか |ワークフローの重要性

AIで変化する仕事を考える以上に大切になってくるのはDXの重要性です。今まで、AIの活用が検討されていたのは企業の中でも部分的で、企業の経営全般に大きなインパクトを起こした事例は多くありません。

これは、社内のデジタル環境やデータベースの整備が進んでいないことが影響しています。

そこで、近年近年注目が高まるDXが重要になってきます。DXとはDXとはデジタルトランスフォーメーションの略で、日本経済産業省は2018年に発行した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」にて、以下の定義をまとめています。

 

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

 

今までは図1で言うところの、脳の部分のアップデートの注目ばかりが高まっていました。

しかし、DXの注目が高まることで、さまざまなデジタル技術、そしてデータを活用することで、企業の競争優位性を高める重要性が再認識されています。

DXが進む上で、多くの企業ではさまざまなデジタルツールが導入されています。特にSaaS形式で導入が可能なクラウドアプリケーションの導入が進み、APIやデータ連携により、各ツールがシームレスに接続されるようになりつつあります。

言い換えれば多くの作業が、AIを筆頭にしたデジタル技術とデータによって変革する時代を迎えているのです。

今まで、私たちは業務の中でさまざまなデジタルツールを活用していましたが、どんなデジタルツールを活用しても私たち人間が介在する必要がありました。しかし、API連携やデータベースの整備により、さらにAIを活用しやすい状況が生まれています。

これからの仕事を考える上で、DXの意味を再確認し、自らの業務や作業を棚卸しして整理することが重要です。

これからさらに重要になるロボティクス

特化型人工知能の発達によって、私たちの仕事のあり方が変わっています。しかし、これからの私たちの仕事の変化を考える上で、忘れてはならないのがロボティクス技術です。

たしかに、AIの登場によって、社会は大きな変革期を迎えました。しかし、それはデジタル空間上に閉じており、現実世界では、まだAIの恩恵に気がつくシーンは少ないのではないでしょうか。

AIをはじめとするソフトウェアが現実社会に影響を与えるインターフェースとなるのはロボティクスです。図1のように、さまざまなセンサーデバイスを搭載し、人間の腕や足の機能を担うロボティクス技術の発達が求められているのです。

これまでのロボットは、工場などで活用が進み、定型的な作業を効率化して工場の生産性を大きく向上させてきました。一方で、人間なら誰でもできる、バラバラに置かれたものを掴むなどの作業は既存のロボットでは難しいのが現状でした。材質や形、重さによって持ち方が変わるため、従来のロボット技術ではものをうまく掴むことができなかったのです。

しかし、機械学習の登場によって、現在ではバラバラに置かれた物をつかんで移動させる(ピッキング)もできるようになっています。

ロボティクスは機械学習技術を活用することによって、変動する環境下でもその場に応じた行動を行うことができるようになります。

社会を見ると、ロボティクスは現在、特に警備の領域で活用が進んでいます。例えば、SEQSENSE社のSQ-2は、画像認識技術やセンサー技術など高度なテクノロジーを駆使することで生まれた自律移動型のセキュリティロボットで、成田空港第3ターミナルや丸の内ビルディング、東京ポートシティ竹芝などで実際に活用が進んでいます。

【引用】PRTIMESSEQSENSE(シークセンス)の警備ロボット『SQ-2(エスキューツー)』、経団連会館で実証実験を実施」より

 

今後も、さらにロボティクスが発展することで、レストランの配膳や工事、宅配など多くの人間の仕事をロボティクスが担うようになってくるでしょう。

 

人口減少の話|AIが仕事を奪ったっていい

まず、日本のマクロな状況についておさらいしておきます。

日本は世界の中でも急激に少子高齢化が進んでいる国です。

国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(平成29年推計)」の結果に基づけば、日本の総人口は、2053(令和35)年には1億人を割って9,924万人となり、2065年には8,808万人になると予想されています。

 【出典】内閣府「令和2年度版高齢社会白書」図1-1-2

 

 

2018(平成30)年には7,545万人だった生産年齢人口も、2056年には5,000万人を割り、2065年には4,529万人となると予想されています。

これからの日本は、長期的に労働力不足に陥っていきます。

また、生産性も問題になっています。IMFが2021年10月21日発表した世界の1人当たり名目GDP 国別ランキングによると、日本は24位となっており、決して労働効率がいいといえるわけではありません。

効率の悪い作業をAIをはじめとしたデジタル技術とデータを活用してしっかりと代替していくこと、より迅速で確度の高い意思決定を行い、方向性を示せる人材を育成していくことが求められているといえます。

おわりに

「仕事」という言葉は普段何気なく使っている言葉です。何気なく使っている言葉こそ、改めて定義を見直すことで、違った視点が見えてくるかもしれません。

人工知能技術が発展し、DXを通じて、私たちの働き方や人間の介在価値は常に変化を続けています。

決して人工知能技術を怖がることなく、道具として利用できるようにスキルを高めていくことで、さらに生産性を高め、社会に対して大きなインパクトを生み出せる人材になっていけるでしょう。

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WRITER

 

  Asei AI/DX専門ライター「Asei」

AIやDXなどが専門のライター。累計執筆数500本以上。 「曖昧な技術を具体的に」を心がけ、トレンドに合わせてさまざまな視点から発信します。フリーのフォトグラファーも。

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