AI人材に必要な「数学力」とは?

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こんにちは。データデザイン部でエンジニアとして職場体験をしております山本です。

AI人材といえば度々話題になる「数学力」。AI関連の職種は理系の印象が強く、事実、数学の知識が必要な業界です。今回は、AI人材に必要な数学力をテーマに、「AI人材の需要と学生の不安感」、「『数学』とは」、「機械学習と数学」の3点について考察していきます。既にAI人材な方も、これから挑戦する方も、数学についてじっくり考える機会となれば幸いです。

目次

AI人材の需要と学生の不安感

日々蓄積される膨大な量の情報を有効活用するため、または作業の自動化による効率化・省力化を行うため、企業へのAI導入が注目されています。それに伴い、AI人材の獲得に特化した採用活動を行う企業も現れています。

ところが、企業のニーズとは裏腹に、AI人材を志望する学生は非常に少ないというのが現状です。マイナビ調査によると、実際にデータを扱う「データサイエンティスト」を志望する学生は全体の3.3%となっています。

AI人材を目指すことに対する不安要素

同マイナビ調査によると、「マイナビ AI推進社会におけるキャリア観に関するアンケート」の中で、「スキル・知識がないから不安だ」(27.4%)、「適性がないと感じるため不安だ」(12.2%)といった個人の能力に関する不安を感じる学生は少なくないようです。また、AI・IT関連の職種を志望すると回答した学生の中でも、「どの程度のプログラミングスキルを求められるのか基準がわからない」(61.1%)、「選考でみられているポイントがわからない」(25.5%)、「AI・IT関連の職種で必要とされる能力がわからない」(24.4%)のように、プログラミングスキルのレベルやその職種で必要とされる具体的な能力など、企業の要求と自分の能力の間のギャップに対する不安を感じているようです。

AI人材の育成

日本のAI人材の不足に対して内閣府では、重要課題専門調査会(第14回)の中で人材育成への注力を対象とした議論が行われました(資料)。その中では、初等中等教育でのプログラミング教育、高等教育以降での数理・データサイエンス教育の取り組みを行うアイデアが提示されています。2020年からの小学校でのプログラミング必修化などからもわかるように、今後の教育において、プログラミングや数理的思考力の成長が重要視されるようです。

AI人材と数学力

内閣府の取り組みからもわかるように、教育機関全体を通して数理的な思考力を養成するためのカリキュラムへの移行が行われていますが、学生に要求される能力に対する不安感も無視できないのが現状です。なぜ学生は、AI人材を目指すことに対して不安要素を抱くのでしょうか。

このような疑問は、高校・大学数学を学ぶ上で発生する数学に対する潜在的な意識によるものではないかと私は思います。次に、「数学」そのものについての考察を通して、AI人材に必要な数学力とは何かを考えていきます。

「数学」とは


一般に「数学」、「数学力」という言葉は何を意味するのでしょうか。
ここでは、数学そのものについて見つめ直し、「数学力がある」とは何ができることを指すのかを紐解いていきます。

数学に対するイメージ

「数学」と聞いて何を想像するでしょうか。高校数学では微分積分や帰納法、大学数学では線形代数やベクトル解析、微分方程式など。あるいはさらにざっくりと、理論が難しい、どこで使うかわからないと思う方もいるかと思います。これらは計算や理論構築が非常に難しく、十分な教育を受けなければ実際に仕事や趣味で使うのは困難でしょう。また、それぞれの分野が互いに関係し合うため、複数の分野を総合的に理解するには膨大な時間とその橋渡しとなる知識(と根気)が必要です。

このように、数学は物理学や化学などのような専門性の強い印象があることから、数学力というと難しい計算や数式に強いというイメージを持たれる方が多いかもしれません。

数式を使わない数学

ここで、こちらの記事をご紹介したいと思います。

数学を学ぶには計算ドリルではなく「高度な数学」から学び始める方が効果的なわけとは?
(元記事)5-Year-Olds Can Learn Calculus

こちらの記事では、子供のころから「高度な数学的な考え方」に触れさせることが、数学的思考力の養成に効果的であるとしています。ここでは、高度な数学とは難しい計算や数式ではなく、図形の中に法則や規則性を見つけること、ものを立体的にとらえることなどを表します。すなわち、問題の「難しさ」ではなく、「複雑さ」に重きを置いているようです。日々の景色の中から規則性を探すことや、似ているものを探してグループ分けすることも高度な数学のひとつであり、これらは直感的で、かつ日常的に行っていそうなことです。子供でもパズルや積み木などを通して、規則性の探し方や分類することを自然と学んでいくことができるのです。

現在の日本の教育は、数学を道具として利用するための訓練に特化したものとなっていると思われます。出題される問題やその解答にはある程度のテンプレートがあり、繰り返し演習することでその解き方を覚えていきます。一方で、数学が得意な生徒は複数の問題の間で類似点や規則性を見出すことで、学習時間の短縮や初対面の問題の処理を行っているということですね。数学力がある人は、これらを問題解決に応用し、似たような事例から解決策を導いたり、問題を分析して細分化したりしているということです。

道具としての数学・学問としての数学

ここまでで、数学には難しさが強い部分と、複雑さが強い部分があるとお話しました。ここではそれについて少し補足します。

数学には道具として利用する場合と、数学そのものについて研究する場合とに大きく分けることができます(もちろん、一概に分けることはできませんが)。前者は応用数学と呼ばれており、工学などでみられる分野です。一方、後者は数学の基礎理論を成す抽象的な分野で、数や図形などの定義づけを行います。

【図】数学の抽象度と難易度の関係図。一番下(赤丸)の部分が小学校や中学校で学ぶ算数、数学の範囲。

こちらの図は、数学の抽象度と難易度の関係を表現したものです。私たちは、初等中等教育で数学のもっとも簡単な(理解しやすい)ところ、図ではグラフの一番下の部分からスタートし、高校、大学と進むにつれてより発展した理論を学びます。日本の数理教育の場合、多くの学生はより実践的な数学を学ぶため、図中のグラフでは右側に進むように理論が発展していきます。

一方で、本記事で私が主張したいのは、AI人材に必要な数学力はむしろ左側なのではないか、ということです。事実、学問としての数学は、対象の「数学的構造」をベースとしてどのような特徴があるかを抽出し、分類することを目的の一つとしています。群論などが代表例です。AI人材に必要とされる数学力は、学術的に高度なところまでは求められることはないと思いますが、対象に規則性や法則性を見出し、分類する力なのではないかと私は思います。

機械学習と数学

前節でAI人材に必要な数学力は「規則性・法則性を見つけ、分類する」ことだと述べました。複数の対象にまたがる規則やパターンを認識して分類するという行為は、まさに機械学習そのものではないでしょうか。機械学習と数学は根本的に似ていると言えそうです。それでは最後に、機械学習の側面から分類することについて考えてみましょう。

特徴量の選択

機械学習の学習済みモデルを構築する上で大切なのが、適切な特徴量の抽出です。生データを直接入力してもうまくいかない場合が大半です。膨大なデータを分析して適切な特徴量を抽出するという作業が、機械学習の精度を上げるカギとなります。これは「データサイエンティスト」の仕事のひとつであり、我々は膨大な情報を束ねて秩序を見出すために日々奮闘しています。

機械学習では、分類するための基準となる特徴量の抽出が大切です。これを数学力の話に当てはめると、何を基準にして規則性があると判断するかによって、分類の結果が変わるということになります。例えば、水と油は液体という意味で同じグループに入りますが、有機物と無機物という意味では完全に別物です。考えが偏らないように、普段から様々な分類方法を考えるのも良いかもしれません。適切な分類をするには、幅広い知識に加えて適切な判断基準を選ぶことが重要となります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。本記事で最も主張したいことを再掲しますと、AI人材に必要とされる数学力は「規則性・法則性を見つけて分類する力」であるということです。今までの数学のイメージとは全く違うものかもしれませんが、数学には直感的な側面もあるということがお分かりいただけたかと思います。難しい計算や理論構築ができることも重要な力ですが、データを分析する上ではむしろ直感に近い部分の能力が必要になります。普段目にするものを注意深く観察し、様々な類似点を見つけることが、直感を研ぎ澄ますためのトレーニングにつながると私は思います。外出する際に、顔を上げて周りの景色を眺めてみてはいかがでしょうか。

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WRITER
Shinnosuke Yamamoto

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山本 真之介Shinnosuke Yamamoto

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