経営層と現場を巻き込むAI開発 ~失敗するAI開発の特徴と解決策~

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皆さん、こんにちは。データディレクターを担当している林です。

今回お話したいのは、膨大なプロジェクトを推進して見えた「AI開発失敗のパターン」「それを解決するための推進方法」についてです。
そもそも、AI開発は従来のソフトウェア開発とフローが全く異なりますので、同じ進め方ではうまくいくはずがありません。


従来のソフトウェア開発では、システムの完成形を定義してから、その完成に向けて開発のプロセスが流れるのに対して、AI開発では、一度定義した完成形がプロジェクトを進めていく中で変わることがあり、そこの試行錯誤に膨大な時間と費用を要します
この試行錯誤の工程をPoC(実証実験)と呼びますが、なぜこのPoCが失敗してしまうのか、原因と解決策について、ご紹介していきます。

1.AI開発が失敗してしまう、よくあるパターン

ⅰ.ベンダーに丸投げな姿勢


AI開発に必要なのは、皆さんのもつ「ドメイン知識」とベンダーの持つ「AIの知識」です。
初めからお客様の業界のドメインに詳しいベンダーはほとんど存在しません。業界独特のルールや、専門用語が必ず存在します。
それらの「ドメイン知識」をベンダーにインプットする作業を怠ってしまうと、プロジェクトは失敗する軌道に乗り出します。

ⅱ.分かりやすい数字(精度)だけに目がいき、プロジェクトのゴールを見失う


一般的なAIベンダーは、このPoCで「分析レポート」を納品します。
技術的な話をベンダーに丸投げしてしまうと、このレポートの中の精度だけに目が行ってしまいがちです。
なぜならば数字というのは非常に分かり易いからです。
何となく、精度は高ければ高いほどいいものができそうな気もしますが、精度が高い=PoC工程の成功ではありません。
本当のゴールは、現場で使えるAIが開発できるかどうか?の判断を下すことです。

ⅲ.数字だけでは経営層に成果が正しく伝わらず、予算を打ち切られる


ずるいベンダーは、精度が上がったことで、成功に一歩近づいたような雰囲気を醸し出します。
しかし、「精度が高い」という技術的な成果は経営層に全く刺さりません。
紙の分析レポートでは結局のところそれが使い物になるのかどうかの判断ができず、PoC半ばで追加の予算が取れずプロジェクトがとん挫してしまう、なんてこともよくあります。

以上が、PoCが失敗してしまうパターンです。
非常に恐ろしい話ですが、実際にPoCの成功率は20%ほどといわれており、これはよくある話なのです。
では、経営層にも正しく成果を伝え、プロジェクトを成功させるにはどうしたらいいのでしょうか。

2. 失敗を回避するための推進方法

早期にプロトタイプを作る

まず重要なのは、モックアップやプロトタイプを通して、完成形のイメージをつかむ、ということです。

例えば3か月間のPoCをやる場合、最初の2週間でモックをつくり画面イメージを共有し、1.5か月でAIモデルを作り精度を確認し、残りの1か月でプロトタイプを作ります。
まず動く、まず触れるものをとにかく早く作ります。

そして、プロトタイプを現場で使うことで見えてくる課題(=理想とのギャップ)を見つけ、どんなアクションを起こせば理想に近づくのか、をベンダーとお客様が共に考え試行錯誤することが重要です。
また、目に見える動くものがあると、経営層への説得材料になります。
社内でまだAI開発に取り組んでいない場合、経営層や現場からは、AIに対する不信感抵抗感が必ず発生します。
そういった場合でも、動くものを見せることで「こういうことがやりたいのね。なるほど」と手のひら替えしになる、そんなシチュエーションに何度も立ち会ってきました。

3. プロトタイプを使うことで見えてくる、現場のオペレーションの変化

プロトタイプを作ったのち、実際に現場で使うことで見えてくるものがあります。
それは、「AIを導入するということで、現場の業務プロセスは塗り替えられる」ということです。

完璧な人間が存在しないのと同様に、精度100%をたたき出すAIも存在しません。
既存の業務をAIで代替させようとしても、AIが誤判定をしたときにどう人手で吸収をするのか?といったことを考える必要があります。

実際の事例を通して、AIを導入することでみられる現場でのオペレーションの変化を見ていこうと思います。

事例: 段ボールの破損判定

とある食品製造・物流業のお客様とのプロジェクトです。

作られた製品を倉庫から出荷する際、箱詰めをした段ボールが傷ついていないか?へこんでいないか?といった破損状況を目視で確認する作業をAIで代替しようとしました。
既存業務での課題は以下の2点です。
課題1: 出荷の判定基準が属人的
課題2: 顧客受け取り時に、受け取り拒否をされトラブルに発展することがある。また箱詰めをし直す手戻り工数が生じている

では、この作業がAIに代替されたとき、どのようになるでしょうか
課題1については、AIの目によって統一された基準で判定結果を出すことができるので、解決ができそうです。
しかし、課題2についてはどうでしょうか。
一度皆さんも、荷物を受け取る顧客側の気持ちを考えてみていただきたいです。
例えば、通販で購入した商品が自宅に届いた時、段ボールが破損していた。
配達員にそのことを指摘すると、「AIが問題ないと言っているので問題ありません」といった具合に返してくるわけです。釈然としない気持ちになりますね。
AIが判定をしたからといってトラブルが回避できるとは到底思えません。

そこで、出荷OK/NGの判定結果だけではなく、過去の画像の中からよく似た段ボールの画像をレコメンドするという形をとりました。
そうすることで、「過去、あなたが受け取ってくれた段ボールとよく似ている破損の仕方をしているんです。」と、過去の類似症例に紐づいた根拠を伝えることができます。

ここで重要なのは、「ユーザー体験を起点に改善のサイクルを回す」ということです。
この事例では、他にも「軍手をした状態で操作するので、スマホの画面を触りにくい」「トラブルが起きているときは緊迫したムードなので、判定結果はなるべく早い方がいい」
「現場の人は高齢な方が多いので、文字はなるべく大きい方が見やすい」などの声が上がりました。
これらの現場の声は、もちろんAIの精度を向上させることで改善するものもありますが、精度以外のシステムや画面表示のさせ方でいくらでも改善できるものも多いのです。
こういった現場を巻き込んだ試行錯誤が、成功への一番の近道です。

4. 終わりに

素晴らしい精度をPoCでたたき出したとしても、経営層にはその成果が伝わりにくいです。
現場のことを理解しているつもりでも、見えていない障壁や意外な躓きがあり、本当に現場で使ってもらえるAIを作るのは困難です。
経営層~現場を巻き込むためには、まず動くものをベースに推進していくことが重要である、ということがお伝え出来たのではないでしょうか。
プロトタイプやモックアップの作り方について、もっと深堀をした記事もありますので、ぜひこちらもご覧いただけると幸いです。
【ご参考】モック主導で、組織を変えられるきっかけを。 ~山ほど案件をこなして見えてきた推進方法~

以上、最後までご覧いただきましてありがとうございました!

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WRITER

Maako Hayashi

林   真亜子 Maako Hayashi

AI・データ活用のディレクターを担当。お客様のAI活用のプランニングから プロジェクト推進を支援。 JDLA Deep Learning for GENERAL 2019 #3

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