オペレーション改善AIに関わり続けて見えた、明確化すべき3つのポイント

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「産業・流通系の現場改善AI、うまくいかなかったらどうしよう。」

産業や流通系のお客様のAI導入で決まって困難となるのが、
「現状組まれている複雑なオペレーションにAIをどう組み込むか」です。

AIというパワーワードがいざ自分事になった作業者の方の反応は千差万別であり、どれだけ優秀な判定システムを組んでも現場が使えないといえばそれきりなのです。

 

最近、よくお客様からお聞きするのが、
現場とプロジェクト推進チームの認識が違っていて、導入に至らなかったケースです。
今回は、こういったケースの事例を挙げながら、オペレーション改善系PoCに取り組む際に明確化すべき3つのポイントをご紹介します。

アジェンダ

1. 問題となるケース
2. 明確化すべき3つのコト
– 1. 業務プロセスの3M「ムリ、ムダ、ムラ」の何を解決するかを明確に定義する
– 2. 推定速度、推論精度、推論結果の見せ方」のどこが必須なのかを定義する
– 3. 1,2の動作を実際に仮シミュレーションした結果
3 まとめ

1. 問題となるケース


例えば、部品の故障を検知するために、予測時間を5秒かけて精度の高いモデルを作成したとしましょう。
AIベンダーとプロジェクト推進チームは、予測時間が長いことを懸念として現場検証へ進みます。

実際に返ってきたフィードバックは、機械の予測精度は問題ないが、「出荷された部品を結局納品先が過敏に反応して受理してくれないので、機械の判定があまり意味をなさない」というものでした。

つまり、本当に注力すべきは予測時間や精度ではなく、なぜそうなったかを人間に可視化するAIのアウトプットだったわけです。

2. 明確化すべき3つのコト

1. 業務プロセスの3M「ムリ、ムダ、ムラ」の何を解決するかを明確に定義する

業務改善のフレームワークでよく使われるのがこの「3M」ですが、解決するのがムダとムラでは大きくプロジェクトの方向性が変わります。

例えば上記の異常検知の例ですと、「ムダ」に着眼すれば、人手でやっている異常検知の工数がAIによって削減できているかという観点から速度や精度をみることになります。
一方で、「ムラ」に着眼し、納品先に平等に受け取ってもらうためのAIであれば、いかに人に納得するかの観点から、速度や精度をみることになります。

このように、1つの課題でも、問題のくみ取り方によって大きく取り組みが変わります。
大抵の問題は3Mが複雑に絡み合った問題なのですが、あえて分解し、どこが一番大事なのかを明文化することが大切です。

2. 「予測速度、予測精度、推論結果の見せ方」のどこが必須なのを定義する

日本の製造業で求められる品質に関して、AIで代替するという話になった時点で、かなりの精度を求められることが多いです。

精度を求めるために技術的なチューニングを加えると起こるのが、「推論に数秒時間がかかる」、「人間の操作が少し必要となる」といったケースです。
プロジェクト推進チームは精度に安堵するのですが、いざ現場に入ってみると「1秒以内でないと使えない」という声が上がります。
大事なのは、実は精度より速度だった・・・というオチです。

このようにほぼすべての課題では、「推論速度、推論精度、推論結果の見せ方」のバランスの落としどころの議論が発生します。
だからこそ、どこの部分は達成できないと使い物にならないのかを定義する必要があります。

3. 1,2の動作を実際に仮シミュレーションした結果

これが一番大切だと考えています。

AIモデルが完成した体で、最初にすべての作業フローをシミュレーションします。
現場とプロジェクト推進チームの合意形成の場をつくり、本当に使えるの?という点を明確にします。

本当に何もないと、シミュレーションできないので、以下のような簡単なhtmlでできたモックを用意し、業務端末にて表示し、現場で実演します。

このモックでは、過去結果や予測モードを切り替えるメニューの下にはカメラ映像があり、赤い円が2個表示され異常個所を指しています。
なぜ異常なのかは書かれていませんが、ニーズによっては、表示だけで十分ですし、理由がツールチップとして表示されることが必要なケースもあります。
場合によっては、似た過去結果をスムーズに参照する必要があるかもしれません。

このようなシミュレーションを繰り返していくと、実は速度が大事であるなど、3Mの中での大事なポイントや、本当に必要なポイントが見えてきます。

まとめ

ここまで3つのポイントについて解説していきました。

私が強く感じているのは、多くの事業会社様が「AIについて理解する」のフェーズから、「AIをどう組み込めばいいのか」のフェーズへ移行しているということです。
技術的な知見に加え、UX(ユーザーエクスペリエンス)をどう形作っていくか、が非常に問われています。

一番最初に、「AIというパワーワードがいざ自分事になった作業者の方の反応は千差万別であり、どれだけ優秀な判定システムを組んでも現場が使えないといえばそれきりなのです。」と書きましたが、
だからこそ、彼らが真に求めている改善をフレームワークなどを使って整理し、シミュレーションを繰り返し、合意形成をとりながら一緒に考えてもらうことが何よりも大切だと考えています。

記事が皆様のお役に立てば幸いです。

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WRITER
Takahiro Yoshida

データサイエンティスト

吉田   孟弘 Takahiro Yoshida

画像解析が中心。メーカー・サービス業を主に担当し、高度な物体認識課題・デザイン・アート方面の生成課題まで幅広く担当。

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