遅れる日本のAI開発、まずは褒めるところからはじめてみませんか?

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インターネットの発展、スマートフォンの普及、AI技術の向上。21世紀の世界は目まぐるしいスピードで変化し、そのスピードはますます速くなっています。

インターネットやAI技術の開発では、日本は先進国の中で出遅れているとも言われ、ときには「一周遅れている」とも批判されます。

一方で開発途上国とされる中国は目まぐるしいスピードで変化し、2021年1~3月の中国のGDP(国内総生産)も、前年同期比で18.3%増え、急激な発展が今でもなお続いていると言えます。

しかし、日本には日本の魅力があるはず。AI分野では技術発展や活用の遅さが批判される日本ですが、

この記事ではあえて日本のよさに着目しながら、AIの活用について考えていこうと思います。

開発途上国が急発展するリープフロッグ現象

開発途上国が急発展している現状を表す言葉としてリープフロッグ現象が挙げられます。

新興国は先進国に比べて技術発展が遅れています。そこで、先進国に追いつくために技術開発を行いますが、その際に段階的な進化ではなくスマートフォンなどの技術を取り入れた最先端の技術を一気に導入することで、社会が一気に発展してしまう現象を指します。

カエルのジャンプのように進化を遂げることからリープフロッグ(カエル跳び)現象と呼ばれています。

例えば、キャッシュレス決済が浸透する割合について見てみましょう。野村総合研究所による「キャッシュレス化推進に向けた国内外の現状認識」によると、各国のキャッシュレス決済比率は、韓国が96.4%、中国が60%、シンガポールが58.8%と半数を超えているものの、日本は19.8%と5分の1にも達していない状況になっています。

また、東南アジアやアフリカなどでは、電話回線や光ファイバーなどのインフラが整う前にインターネットやスマートフォンが普及したため、衛星を介してモバイル向けサービスが急速に発展しました。

インドが急発展した背景にもITの存在があると言われています。インドでは、今ではカースト制度が廃止されていますが、昔はカースト制度の存在が当たり前でした。今でもその影響はまだ残っており、インドにおける重要な課題になっています。

一方で新興産業のITは、身分に関係なく働くことが可能で、インドでは急激にIT産業の従事者が増加し、技術発展が起こっています。IT産業では身分で判断されない上に、給料水準も高いため、IT人材になろうとする方が増えています。

このように、日本の技術発展が停滞すると同時に、世界の開発途上国がITを活用して急発展を遂げ、さらに日本の国際競争力低下に繋がっていると言えます。さらにAI開発の文脈では、ITの活用が進んだ国々ではデータの蓄積が進み、そのデータを活用して高精度のAIを構築し、さらにサービスのUXを向上する好循環を生み出すことができます。中国やインドは日本に比べて、人口も多いため、蓄積するデータの量は日本と桁違いになるのは想像のとおりでしょう。

変化を恐れる日本、人で成り立っていた高度社会 日本

一方で、日本の社会はどうでしょうか。20世紀後半に急発展を遂げた日本は、特に社会インフラの整備という点で、高度な社会を形成しました。このレベルは世界の中でもITが発展する以前から高度な社会を形成し、GDPも世界トップを誇っていました。

例えば交通インフラを例に挙げてみましょう。日本国内では、電車やバスなどの公共交通機関網が整備され、移動に困ることもなければ、ほとんど時間ぴったりに電車やバスなどが運行しています。

また、飲める水道やモバイルインターネット基地局の整備も進み、ほとんどの日本国民が当たり前のように公共インフラの恩恵を享受することができています。さらに、日本の貨幣の製造技術はとても高く、偽札が製造されるリスクが国際的に低いほか、コンビニにもATMが設置され、現金のUXが非常に高くなっています。

ほかにも小学校から大学院まで日本語で教育を受けられるなど、日本独自の発展を遂げてきたのが特徴です。

これは言い換えれば、日本で生活する多くの国民の生活上の課題意識が低く、ITを活用するモチベーションに繋がらないということになります。合わせてデータの蓄積が進まず高精度なAIを開発する環境が整っているとは言えません。

また、多くの道路や水道管など、従来の社会インフラが老朽化を迎えていることも重要課題となっており、このまま放置すれば、今のような生活を維持することも難しくなってしまうでしょう。

進む人口減少、高度な社会をAIに置き換えられれば勝機?

上述のように、日本は人の手で高度な社会を築いてきました。一方で、データが蓄積せずにAIの発展が国際的に遅れたり、社会インフラの老朽化が進んで社会課題となっています。

また、人の手で高度な社会を築いた日本でも、少子化によって、生産人口が減少する問題に直面しています。日本人口は、2053年に人口が1億人を切ってしまうと予想されています。このまま人口減少が進めば、国内の総労働力が減少し、社会を維持することができなくなるほか、支える高齢者の数が増加し、相対的に若年層の負担が増加してしまうことになります。

だからこそ、筆者が掲げる日本のAI戦略は、従来の人の手で築いてきた社会を、適切に自動化したり、ITを活用して拡張していくことです。世界では、AIの発展で「人間の仕事が奪われる」という極端な予測がメディアで報じられ、ときにAIが仕事を奪う悪者として扱われることも少なくはありません。

しかし、日本ではAIに仕事が奪われる以前に、生産人口が減少し続け、働く人が少なくなっています。しかも、日本の労働効率は諸外国に比べて低水準となっているので、生産性を高めながら、減少する労働力をカバーしていく必要性があります。

そこで、従来築き上げてきた日本のシステムを適切にITで代替していくことが重要ですが、まずは日本全体でDXの定義に立ち返る必要があります。

日本の強みをデザインする

日本国内では厳密な定義を理解しないまま「DX」という言葉が広く使われるようになり、単に「デジタル化」することがDXと理解されている場面もしばしば見かけます。

一方で、DXでは「強み」のデザインに重きが置かれていることを再度認識しておくことが重要です。

まず、経済産業省が定義するDXの定義に立ち返ってみましょう。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

このようにDXの目的は競争上の優位性を確立することであり、どのように強みをデザインし、そのためにデータやデジタル技術を活用するかが重要になっています。

上述の通り、日本国内では、人手を介して社会が支えられてきました。その多くはデジタルデータ化しておらず、記録されていないか、アナログな形式のままのものが多いでしょう。

従来、日本が築いた高度な分野をデータとデジタル技術で代替したり拡張することができれば大きな勝機となります。

ここで重要なのは、AIの活用を念頭におきながらも、まずはソフトウェアの活用を進め、データが蓄積する環境を整備することです。国内でも多くの変革が行われていますが、短期的かつ部分的に、真っ先にAIの活用を検討する企業が、依然として多い状態となっています。

しかし、それでは構造的な改革は進まず、データを蓄積してAIの精度を改善していく好循環を生み出すことができません。

まずは、多くの産業でソフトウェアの活用を進めることで、現場のデータが蓄積される環境を作るだけでなく、一部の現場の作業を効率化することが重要です。その後、蓄積したデータで新たなサービスを立ち上げたり、業務を効率化するなどのアプローチを取ることで日本の産業を大きく効率化することができます。

DXは大きく分けて3階層に分かれています。

1階層目:現場に展開するプラットフォーム=ソフトウェア

2階層目:データを蓄積していくデータベース

3階層目:データを学習して新たな価値を生み出すAIシステム

まずは、日本の強みを設計した上で、1階層目〜2階層目の整備を行い、早急にデータを蓄積して3階層目のAI開発に乗り出していくことが重要です。この知識は、書籍「ダブルハーベスト 勝ち続ける仕組みをつくるAI時代の戦略デザイン」でも詳細に述べられていますので、ぜひ合わせてご覧ください。

おわりに

国内では、日本の経済成長を不安視し、AI分野でも日本の技術停滞を批判する声が上がっています。一方で、弱みばかりに目をつけて不平不満を垂れていても日本の技術力は向上しません。

幸い、2020年からはDXへの注目が高まり、多くの企業でソフトウェアの活用が進みやすくなっています。

今こそ、もう一度日本社会の「良さ」を再認識し、どのようにすればデータやデジタル技術でその強みを国際的にも競争優位性が高い形にできるのかを考えることが重要ではないでしょうか。

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WRITER

 

  Asei AI/DX専門ライター「Asei」

AIやDXなどが専門のライター。累計執筆数500本以上。 「曖昧な技術を具体的に」を心がけ、トレンドに合わせてさまざまな視点から発信します。フリーのフォトグラファーも。

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