<前編>実際にフォークリフトに乗って考えた危険

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先日、フォークリフト運転技能講習を受けてきまして、無事修了しました。
きっかけは、弊社でフォークリフトの安全を向上させるサービスを検討していることで、専門用語を覚えたりどんな風に動くのか、荷役はどのように行うのかを体感してサービス開発に活かせないかと考えて受講したものです。

講習を受けて感じたこと、考えたことを記事にしました。長くなったので前編、後編に分けてお送りします。

<前編>(本記事)では実際にフォークリフトに乗ってみて感じた危険について記載します。
<後編>ではこれら危険に対してどのような安全対策が有効そうかを考察します。(記事はこちら

本題の前に

フォークリフトを知らない方はいないと思いますが一応定義です。

フォークリフト(Forklift)とは、油圧を利用して昇降および傾斜が可能な荷役用のつめ(フォーク)を車体前面に備えた荷役自動車。
参考: フォークリフト(Wikipedia)

動画で見ていただいた方がイメージがわくと思います。

こんな感じでつめ(フォーク)を荷物の下のパレットに差し込んで積んだり、移動させたりします。

フォークリフトを操作する業務に従事するには国家試験である「フォークリフト運転技能講習」を修了する必要があります。保有する免許によって2日〜5日と講習を受ける日程が変わります。

私は自動車の普通免許を持っていたので4日間(8/7,11,12,15)受講するパターンでした。最初の1日が学科+学科試験、後の3日が実技+実技試験です。実技試験は最終日の15時ごろからありました。私が受講した場所は実技が野外となっており、12日,15日の2日は雨で、特に15日は大ぶりの中の練習・試験となりました。

ちなみに試験コースはこんな感じで、手前(右)側の架台から荷物を積み取り、曲がった先の架台に荷物をおろし、後進して終わりという流れです。

フォークリフトに乗ってみて感じた危険

危険1:誰でもフォークリフトに乗ることができる

合格率はほぼ100%

学科試験は日本語話者であればほぼ100%の合格率だそうです。
実技も90~95%の方は1発で合格、再試験を含めれば合格率はほぼ100%に達するそうです。

実際受けてみて、自動車のペーパードライバーの私でも1日乗ればほぼ通常走行については慣れましたし、荷役に関しても流れと操作をつかめばそう難しくありませんでした。

技能や適性がない人も業務に携われる

しかし裏を返せば十分な技能や適性がない人も荷役業務につけるということを意味します。

複数日に分けて受講したので20人ほどの受講者とご一緒しましたが、「あぁ、この人はいつか事故を起こすだろうな」という方が何名かいらっしゃいました。ちなみに私も「事故を起こす」側の人間だろうと思います。

事故を起こしそうだと思ったタイプ

私が事故を起こしそうだなと感じた人はこのようなタイプの方です。

  1. 焦るとパニックになってしまい頭が真っ白になるタイプ
  2. 独自の運転を行い、ハンドル操作や目線がお手本と異なるタイプ
  3. 同じ動作の繰り返しで集中力が途切れ、飽きてくるタイプ(私)
  4. 自分は運転が上手いと過信するタイプ(私)

現場では配送時間の制約から荷役業務もゆっくりやっていられない状況があります。荷物到着の遅れなどをリカバリするために通常より急ぐことを求められる事もあるでしょう。そういう場合、1のタイプはいつものクオリティが発揮できずにミスを犯しがちだろうと思います。

2のタイプの方は一見スムーズに運転しているように見えます。
しかし、ハンドルの切りすぎで逆に大回りになっていたり(※)切り戻しを多用して進路を調整したりしています。指差し確認も形だけで目線は確認方向を見ていない(見ていても次の動作のことを考えている)ように思えました。

このような方は講習に来る前に職場ですでに乗られている方が多いという話を教官から聞きました。また、長く現場で乗っていると基本から外れて独自の運転を身につけるベテランさんもいるのではないかと考えます。

3,4のタイプは詳細を省きますが、ちょっと上手くいったからと「自分って運転上手いのでは?」と調子に乗り、その後の練習では慢心と飽きからくる集中力不足でミスが頻発した私のような人間はフォークリフトに乗るべきではありません。

技能・適性試験での人材絞り込みは難しい

では厳しい訓練や基準、適性試験を通った人を従事させれば良いかというと、現実的には難しいです。

需要と供給の関係をみてみます。
フォークリフトオペレータの有効求人倍率は直近コロナ禍の影響で一時的に低くなっていますが、2019年12月ごろまでは1.0を超えており、現在の試験通過者と需要とはちょうどバランスが取れているという状況です。

出典:e-Stat「データセット情報_一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」

 

需要面で物流市場の今後を考えてみます。
大量生産大量消費時代は終わりに近づいており、国内貨物輸送量は近年横ばい、今後は減少傾向になると予想されます。

出典:国土交通省「物流を取り巻く動向と物流施策の現状について」

 

フォークリフトの国内販売台数推移を見ると2009年に一時的に落ち込んだものの、8万台/年まで回復してきており、輸送量の減りと連動していないことがわかります。

出典:一般社団法人 日本産業車両協会「フォークリフト生産、国内販売、輸出実績」

これは従来とは違う利用シーンが発生してきていることだと考えます。例えばEC取扱量の増加により従来手作業で十分だった配送業者がフォークリフトを新たに導入するなどのケースです。
つまり形は変われども、これからもフォークリフトの需要は継続してありそうだということです。

 

供給面でフォークリフトオペレータの年齢構成について考えてみます。引用できる資料を見つけられませんでしたが、取得に年齢制限がなく、求人でも40歳以上活躍中、60歳以上応援というキーワードを目にする機会もあることから高齢化率は高いのではないかと予想します。
そうなると、現在60歳の現役フォークマンが10年〜でリタイヤしだすと供給が追いつかず、人手不足に陥ってしまうでしょう。

この状況で試験に通る人材を絞り込むと需要に対して供給が追いつかないという状況になってしまうのでそう単純なことではなさそうです。

危険2:事故に巻き込まれやすく、事故が起こればタダでは済まない

私が講習で乗らせていただいたフォークリフトはトヨタL&Fさんで販売しているカウンターバランスタイプのフォークリフトで、FB15というものです。

出典:TOYOTA L&F 「geneB FB15」

 

フォークリフトはとにかく重い

定格荷重(フォークリフトに乗せられる荷物の重さ)が1.5tで、車両重量が約2.7tあります。
乗用車の重さはどのくらいかというと、2020年の売り上げランキング1位のトヨタ「ヤリス」では940〜970kgとのことなのでフォークリフトがどれだけ重いかがわかるかと思います。

参考:みんなのライフハック@DIME

なぜこんなに車両重量があるかというと重い荷物をフォークにぶら下げた時に倒れないように、車体後ろの下の方に重りを配置してバランスを取るためです。その他フレーム(マスト)などもお守りの役割を果たすために重めの素材で作られています。

重量がある一方、サイズはコンパクトです。
FB15の全長は約2m(フォークを入れると3m)、全幅は約1.1mしかありません。一方ヤリスは全長約4m、全幅約1.7mなのでかなり小さいです。

小さく作られている理由は狭い通路の中で荷役業務を行うためです。
クレーン車などは広く足を伸ばして踏ん張ることでバランスを取るのでフォークリフトより軽くなります。(軽くなるといっても1.5tを吊れるカニクレーンでも1tほどありますが。)

素人が周囲にいる状況での作業

フォークリフトは倉庫内やトラックとの荷のやりとりなどに使われます。倉庫内には梱包作業を行うパートさんや手で荷物を運ぶ方、事務の方などフォークリフトの素人の方が多くいます。

大きいものが重いのはわかりやすいと思いますが、小さいものがこれだけの重量あるというのは直感に反します。最初に見たときサイズ感やカラフルな色使いから軽そうに感じて横から押してみましたが、当たり前ですがびくともしませんでした。

フォークリフトの危険性を十分理解していない素人が、一見すると小さく軽そうに見えるフォークリフトに不用意に近づいて接触事故を起こす、そういうことがありそうだなと感じます。

バランスを崩しやすい

設置面積が狭いということはバランスが悪いということです。それを補うために下に重心を置くべく重りが積まれているわけです。この重りは定格荷重を安定して荷役できるように計算されたものです。

従って定格荷重より重いものを持つとバランスが保てなくなります。
また、定格荷重以内であってもスピードを出したまま急ハンドルを切ったり、荷物を高い位置に掲げたまま急発進したりするとバランスを崩して片輪が浮いたり、最悪の場合横転したりします。
バランスを崩すと荷物が崩れてしまったり、自分自身や同僚を下敷きにしてしまう可能性もあります。

講習では台に置かれた1tの荷を積み取り、移動させ、別の台に降ろします。1tなんて人間なら絶対持てないですよね。でもフォークリフトならレバーを軽く引けば上がるんです。レバー操作が雑というか、思いっきり動かす人のフォークリフトはかなり揺れていました。

また、フォークを奥まで差しきらないで荷を上げてしまう方もいて、そういう場合は重心がかなり前方になり、荷が斜めに引っかかったような状態になっていました。

左:適正差し込みの場合 右:差し込み不足の場合

この状態(奥まで差していない)状態で走行して急停止・急旋回などを行うと荷が崩れたりフォークリフトが倒れたりしそうです。

何トンもの鉄の塊がぶつかってきたらどうなるでしょう。タイヤで足を踏まれたら?乗用車に足を踏まれるのとは全く違った結果になるだろうことは想像に固くありません。

危険3:定型業務による油断と時間制限による焦り

定型業務による油断

フォークリフトの操作は慣れててしまえばそこまで難しくありませんでした。
また、実技1日目は受講生が多くそれぞれがまだ慣れていないこともあり自分の時間が早く回ってきてほしいと思っていましたが、実技2日目にもなると乗れる回数も多くなり、同じ動きの繰り返しで若干飽きが出てきました。

実際の業務でも日々同じような作業を繰り返すことが多いかと思います。
「荷物の移動」「荷物の積み取り」「荷物の取りおろし」が基本の操作で、作業場所も荷物もそこまで変わるようなものではないでしょう。(もちろんそうではないケースもたくさんあると思います)

 

同じ作業の繰り返しで集中力が途切れ、いつもと同じ「だろう」と業務を行なっていると新しく入ってきた人が導線に入ってきて衝突、ということが発生しそうです。
実際に発生した事故はこちらのサイトなどで確認できますので興味のある方はご確認いただければと思います。
キーワードに「フォークリフト」と入れると様々な事故事例が確認できます。

参考:厚生労働省「職場のあんぜんサイト」

時間制限による焦り

講習では、実技の2日目の昼から荷役の練習が始まります。その後3日目の昼まで試験の動きを練習し、その後試験に臨むという流れになるのですが、その中で10回前後試験の動きを練習することになります。

試験には8分という時間制限があります。この時間は決して厳しいものではなく、慎重に作業しても間に合う時間設定です。
しかし、どうもタイムを計っているとなるとより早い時間で終えたいという心理が働くようで(私だけでしょうか)、前回より早く早くと焦るように運転をしていました。

その結果どうなったかというと、10回ほど乗った初回が時間はかかったがミスが一番少なく(ノーミスで減点なし、7分45秒)、試験直前が一番早くミスが一番多い(安全確認漏れ、荷の位置がずれているなど3箇所の減点、5分7秒)となりました。
初回は時間を気にせず、教わって手順をしっかりやろうと意識して運転しました。
試験直前はある種タイムアタックのような感覚で、どれだけ早く(手順も忘れず)できるかという感覚で運転しました。

実際の現場でも作業量に目標があったり、出荷予定の締め切りなど、時間のプレッシャーがある中での作業となります。もちろん私の場合は技能不足の影響もあると思いますが、急ぐとミスが多くなるというのはベテランにも当てはまることじゃないでしょうか。

 

さらに、ここに「定型業務」という要素が加わるとどうなるでしょう。そうですね。横着したくなります。

安全確認をやらなかったり、移動しながらフォークの操作をしたりします。後者のながら操作(同時操作)については講習ではNGと教わりますが、実際の現場ではよく行われるものです。もっと言えば、ながら操作をしないと「なにチンタラやってるんだ」と怒られる職場の方が多いのが現状です。
フォークは油圧で動かすのですがそこまで早く動かないので、私も走行しながら動かしたくなる気持ちは分かる気がしました。

ながら操作とそうではない操作の比較、効率とは

ながら操作と、そうではない操作(移動→停止→フォーク操作)の比較イメージを作ってみました。(雑ですいません。)

このイメージだけ見ると確かにながら操作の方が早くて効率がいいように見えます。
しかし実際は、ながら操作でフォークを動かしすぎて戻したり、綺麗に置けなくて置きなおしたりなどのロスが発生します。
また、業務全体で見るとこの荷役業務自体の速さは業務全体のスループットに寄与していないことの方が多かったりします。

車の運転に例えるとイメージしやすいかと思います。法定通勤されている方は実際に時間を計ってみていただくと腹落ちいただけるのではないでしょうか。

危険のまとめ

ここまで内容をまとめるとこんな感じになるかと思います。

 

危険1と危険3によりヒューマンエラーが起きやすい状況を作っており、危険2で事故の影響を拡大していると考えられます。


以上、前編ではフォークリフト運転の危険についてまとめてみました。
後編では危険に対する対策をお伝えします。

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WRITER

データサイエンティスト / ディレクター

宮崎   義継 Yoshitsugu Miyazaki

大手生保系SIer、TOCによるマネジメント変革、Windsurfing labプロジェクトでの組み込み開発及び事業開発を経て2019年11月より富士通クラウドテクノロジーズに入社。データ活用サービスの構築及び企画を担当。

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