<後編>実際にフォークリフトに乗って考えた対策

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先日、フォークリフト運転技能講習を受けてきまして、無事修了しました。
きっかけは、弊社でフォークリフトの安全を向上させるサービスを検討していることで、専門用語を覚えたりどんな風に動くのか、荷役はどのように行うのかを体感してサービス開発に活かせないかと考えて受講したものです。

前編の記事では、フォークリフトに実際に乗って感じた危険についてお伝えしましたが、後編ではそれらの危険に対して、どのような安全対策が有効かをお伝えします。

<前編>実際にフォークリフトに乗ってみて感じた危険について記載します。(記事はこちら
<後編>(本記事)ではこれら危険に対してどのような安全対策が有効そうかを考察します。

前回のおさらい

前編ではフォークリフト運転における危険についてお伝えしました。まとめた結果はこちらです。

危険1と危険3によりヒューマンエラーが起きやすい状況を作っており、危険2で事故の影響を拡大していると考えられます。

対策

前編でお伝えした危険な状況に対しては、どのように対策を打つべきでしょうか。
事故発生の重要なポイントは「ヒューマンエラーが起きやすい」という部分です。
ここにつながる原因にアプローチできるような対策を考えてみましょう。

対策1:事故が発生しにくい環境を整備する

「危険」のところでは書きませんでしたが環境は重要です。
講習の時も2,3日目は大雨で視界も悪く、音も聞こえない状態だったのでパレットに当たっているのに気づかず差しに行って減点される人がいました。
実際の現場では床が斜めになっていたり段差があったり、荷物のせいで明るさが足りなかったり、いろんな危険要因があると聞いています。

倉庫を新しく建て替えるのは費用面で難しいことも多いと思います。
もっと身近なところで屋根をつけたり、段差を埋めたり、暗い場所に補助のライトをつけたり、工夫次第で危険要因を減らすことができるのではないかと考えます。

対策2:人が運転しない状態を作る

人がやるからヒューマンエラーが発生するんであって、ロボットにやらせたらいいじゃないの?という考え方ですね。
フォークリフトの場合はAGV(Automatic Guided Vehicle:無人搬送車)の導入を検討するということです。

意外に歴史は古く、90年代ぐらいからAGVは製造ラインなどで利用されていました。
近年ビッグデータやAI技術の発展により進化し、不定形なルートでの自律走行もできるようになってきています。
amazonの倉庫で利用されているイメージを持たれている方が多いかと思いますが、事務用品販売のアスクル株式会社の倉庫などでも実用されています。

では全ての会社でAGVに切り替えてしまえばいいかというと、そう単純な話ではありません。
一番大きな問題は導入コストです。
機械自体の購入、運用コストもありますし、工場や倉庫内の配置や運用オペレーションを最適化するなどの検討・導入コストもかかってきます。

また自律走行ができるようになったとはいえできないこともまだまだ多く、人間のオペレータにしかできない作業は依然残っています。
とはいえ安全施策の有力な手段の一つではあるので部分的にでも導入を検討すべきだと考えます。

ちなみに、フォークリフトも危険な乗り物に違いないですが厚生労働省の労働災害統計によるとトラックを起因物とした死亡事故、死傷事故の方が圧倒的に多い状況です。

出典:厚生労働省「労働災害統計2012-2020合計」

鉄の塊を何十キロのスピードで何時間も人間が運転し続けるというのは狂気の沙汰だと思っています。
個人的にはさっさと自動運転を全面導入して人間が運転するは緊急時以外全面禁止にしてほしいです。
余談でした。

対策3:危険な操作をできないようにする

いわゆるフール・プルーフの考え方です。
集中力の低下では無意識に、作業効率を優先する場合は意識的にですが、危険な操作をすることはありますので、それを防ぐためにはそもそもその操作をできなくするというのが対策の1つとして考えられます。

講習で利用したフォークリフトにはいくつかのフール・プルーフ機能が組み込まれているようでした。
例えば以下のようなものです。
・座席に座っていないと前後進やフォーク操作ができない(アクセルやレバーを操作しても動かない)
・速度制限

「危険な操作」で物議を醸すのが「ながら操作」です。
事故につながる可能性が高い操作なので完全に禁止する会社がある一方、従来から大多数の現場でやられている操作なのでこれをできなくするような設計をスムーズに受け入れるのは難しいかもしれません。
最初は解除可能な機能としてでもいいので、走行とフォーク操作を同時にできなくする機能、作ってみませんか?

対策4:ヒューマンエラーをしても事故につながらないようにする

いわゆるフェイル・セーフの考え方です。
フォークリフトの場合、危険な操作をしてしまっても安全を確保するような機能で、具体的には以下のようなものがこれに当たります。

・高所リフトアップ時のチルト速度の減速/傾斜角度制御(高い位置に荷物があるときに急に傾けるとバランスを崩すのでゆっくり動くようにし、さらに傾けられる角度を小さくする)
・荷物の高さや重さによって加速/減速を自動で制御する機能
・進行方向に人がいるときに走行できないようにする(実際は警報を鳴らすだけのものが多い印象)

対策3、4で記載した機能は最新型のフォークリフトにはデフォルトで組み込まれていることが多いです。
利用するフォークリフトを全て最新型に入れ替えられれば良いのでしょうが資金的に、用途的にそうならずに新旧混在となるケースが多いのではないかと思います。
そういった場合、新では安全装置により安全が担保されていても、旧に乗り換えたときに新の感覚で乗って危険操作を行い事故を起こすということがないとはいえません。

対策5:安全に作業する意識の醸成、風土づくり

ここまでの対策は全て検討すべきでしょうし、導入すれば一定の効果を発揮するものと考えます。
それらではカバーしきれない部分は人間系、フォークリフトオペレータの安全意識の醸成、安全に作業する風土づくりが重要になってくると考えます。

これは、システムを導入して終わりというものではないと考えます。
システムはあくまで支援です。
評価項目の策定、安全のためのKPI設定(例;ながら操作を業務の10%以内とするなど)、これらの周知・啓蒙、被評価者に合わせた定期的なフィードバックなど現場責任者、安全推進担当者が矢面に立って検討・実行することが多くあります。
ここにコミットできるかが、これから先信頼される安心安全な企業となるかそうではないかの分水嶺になるだろうと私は思います。

余談的な対策:憧れの職業化

上記に「技能・適性試験での人材絞り込みは難しい」とかましたが、パイロットや電車の運転手のように「憧れの職業:フォークマン」みたいな路線はありな気がしています。
格好いい職業としてブランディングして、給与も上げて待遇をもっと改善し、厳しい関門があっても目指したい職業にするみたいな。
フォークマンの上手な運転を見ると惚れ惚れするので是非この路線に誰か仕掛けて欲しいです。

少し冗談のように聞こえますが半分本気です。
フォークリフトオペレータの需要はまだまだあるとはいえ自動化の波は押し寄せてきています。
AIやロボットに淘汰されないためには、それらに代替されるのではなく、それらを使いこなす側にならなければなりません。
AGVでできない難しい作業ができる、AGVが動作しやすい配置や経路を設計できるなど高度な技能とIT知識を持った「インテリジェンスフォークマン」みたいなものがこれからのフォークマンが目指すべき道の一つではないでしょうか。
少し話が逸れました。

最後に

以上が私がフォークリフトに乗った実体験から感じた危険と、どうすべきかを考えた対策です。

フォークリフトは危険と隣り合わせの乗り物です。講習の最後に講師がおっしゃったこの言葉が忘れられません。

「自動車事故の被害者は赤の他人ですが、フォークリフト事故の被害者は同僚です。フォークリフト事故の加害者はほぼ会社を辞めていきます。新しく入った人に「あの人なんで車椅子なんですか?」と聞かれていたたまれなくなるからです。車椅子なら運がいい方でもし亡くなられたら葬式に出席することになります。残された奥さんに「うちの人を返して」と言われたらどうしますか?」

ほんの一瞬の気の緩みで多くの人の人生を壊してしまいかねないフォークリフト作業。
その安全対策の一助となれるよう今後もフォークリフトの安全に関するサービス化を進めてまいります。

以上、それでは皆さま、今日も一日ご安全に!!

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WRITER

データサイエンティスト / ディレクター

宮崎   義継 Yoshitsugu Miyazaki

大手生保系SIer、TOCによるマネジメント変革、Windsurfing labプロジェクトでの組み込み開発及び事業開発を経て2019年11月より富士通クラウドテクノロジーズに入社。データ活用サービスの構築及び企画を担当。

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