藤井二冠誕生で考えるゲームAIと人の関係

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はじめに

富士通クラウドテクノロジーズデータデザイン部の木村です。

皆さんはゲームAIと聞くとどのようなイメージを持たれるでしょうか?
テレビやオンラインゲームに使われるAI、将棋や囲碁などの対戦ゲームのAI、人間より強いプレイヤーをつくるAIなどイメージされるかもしれません。
これらは全て正しいです。しかしゲームAIはそれだけではなく、私たちの生活に溶け込んで、「遊び相手」「勝負相手」とは異なる関係を築いています。

そこで今回は、藤井聡太二冠誕生のエピソードを深掘りすることで、ゲームAIと人間の関係性の変化を考察したいと思います。

そもそもゲームAIとは

一口にゲームAIといっても色々な種類があります。ゲームAIは多くの場合以下の3つに分類されます。

ゲームAIの分類 キャラクターAI、メタAI、ナビゲーションAIにわけられます

ゲームAIの分類

まず、キャラクターAIです。キャラクターAIはゲーム内のキャラクーに組み込んで自律的に動作させるものです。RPGの敵モンスターや格闘ゲームでの「NPC(Non Player Character:人間が操作していない自動で動くキャラクター)」などが分類されます。
私がAIっぽいと感じるのはこのキャラクターAIです。機械学習などの技術を用いず、製作者が動きをすべて決めているものもキャラクターAIと呼ばれます。ゲームAIと聞いて最初に思い浮かぶイメージが、このキャラクターAIだという方も多いのではないでしょうか?

次にメタAIです。メタAIはプレイヤーの動きなどを判断して、敵キャラクターの強さや出現数といった難易度をコントロールします。ゲームのバランス調整といった点は長い間人力で行われてきましたが、メタAIの登場によって自動的に調整が行われるようになりました。さらに近年では調整だけでなく、自動でステージを生成するといった研究も行われています。

最後にナビゲーションAIです。ナビゲーションAIは、プレイヤーやキャラクターAIがゲームの世界を移動したりするときに経路などを教えてくれるAIです。現実世界で言うところのカーナビと近いイメージですね。

もちろんゲームAIというのはこれに分類したものに限らず、ゲーム開発のサポートをするためのAIや人間のプレーをアシストするようなものも開発されています。

ゲームAIの歴史

“ゲームをプレーするAI”もキャラクターAIに分類されるということは、先ほど述べました。キャラクターAIの歴史は長く、現在のように分類される前から研究されてきました。どれくらい昔からというと、人工知能という概念が生まれた時とほぼ同時期に研究が始まっています。この理由は、ゲームという分野が

  • ルールがはっきりしている
  • 勝ち負けという明確な結果が出る

という点でAIの評価指標として非常に適しているからです。こうした背景から、ゲームAIというとこのキャラクターAIのことを指していることも多いです。今回はこの“ゲームをプレーするAI”に焦点を絞って話していきたいと思います。

簡単にですが、“ゲームをプレーするAI”の歴史をまとめてみると以下のようになります。機械学習の理論の発展や、ディープニューラルネットの登場、近年のマシンスペックの向上など様々な技術の進歩とともに強くなっていきました。長年ゲームAIは人より強くなることが目標だったのですが、数多のゲームで人を越える強さとなり、最後の砦と言われた囲碁においても2017年に「AlphaGo」がトッププロを相手に完勝し、人とAIとの戦いは終了したといわれています。

ゲームAIの歴史

ただ、人間を越えてしまったからこの分野は終了…というわけではもちろんありません。AIと人間の関係は戦いから様々な形へ変わってきています。

将棋とAI

将棋AIとは、「盤面を見てどのような手を指すかを自分で考えて決定するAI」です。ゲームAIの説明でも書かれている通り、将棋AIもキャラクターAIの1種です。技術としては、今のAI技術では当たり前となっている機械学習も使われています。将棋AIにも色々なタイプがありますが、「プロ棋士の対局の棋譜」や「AI同士で戦った棋譜」を用いて学習を行っています。将棋AIは人と同じように対戦することもできれば、棋譜を入力して良かった手や悪かった手を知ることもできます。

最近では、“将棋AIが人間よりも強い”という認識は当たり前のものになっています。しかし2000年代頃までは、将棋AIの実力は人間のトッププロに及ばないものでした。トッププロに勝ち越すだけのレベルに達していると判断されたのはここ数年のことです。先ほどの歴史の部分で触れましたが、将棋AIも強くなったことで人間とのかかわり方を変えてきています。

プロ棋士がAIから学ぶといったことはまさにその一例です。今のプロ棋士は強くなった将棋AIソフトと対戦することや、ソフトに棋譜を解析させて「こういった局面ではこの手が強い」といったことを学ぶことができる環境にあります。藤井二冠のような新時代の棋士の登場も、もちろん彼自身の類まれなる才能と鍛錬が根底にありますが、将棋AIの力もその一端を担っていると言えるでしょう。藤井二冠は過去の棋譜にない新しい手を指すことや、AIとの着手の一致率が高いことで有名ですが、これは将棋AIが打つ手を学んでいるからです。

強くなった将棋AIの将棋界への貢献は、プロ棋士に限った話ではありません。AI×将棋で有名な事例にAbemaTVの将棋実況があります。AbemaTVの将棋実況では、リアルタイムでAIの形成判断をみながら将棋を観戦できます。私自身も将棋観戦はよく見るのですが、将棋が下手な私にはAIが導き出した有利不利の表示が非常に役に立っています。有望な手が表示され、それを解説の棋士が検討してくれる場面も最近は見慣れたものになりました。これもゲームAIと人の関係の新たな形の一つだと言えるでしょう。

Abema TV将棋チャンネルの画像
出典:「藤井棋聖は時限爆弾を解除し続けた…」将棋中継をドラマチックにする
「SHOGI AI」の“人間味” 開発責任者が明かす秘話

画面上部ではどちらの棋士が有利かを「%表示」で見ることができ、画面中央右側ではAIが有力だと考える手も表示されます。

他にも「将棋ウォーズ」という将棋対戦アプリでは対戦中にポイントを使って強力なAIに代指しを行わせることができます。自分の棋譜をAIに解析してもらえる機能もあります。将棋AIがエンターテインメントの幅を広げた一例です。

ゲームAIの活用事例

もちろん将棋以外にもゲームAIが活用されている例はあります。

これまで述べたように、技術の発展と共にゲームは様々な表現をすることができるようになりました。NPCもいろんな行動をとることができるようになっています。しかし、それに付随して問題も生まれました。NPCの動作の調整などを人力で行うと、膨大な時間がかかるようになることです。そういった調整をAIに任せて、プレイヤーの体験を向上させる試みも行われています。
こちらはメタAIの話になりますが、「FINAL FANTASY XV(スクウェア・エニックス)」では、メタAIを戦闘の調整に使用しています。メタAIがプレイヤーの状態を監視してその結果から仲間のNPCにプレイヤーに指示を出します。例としてはプレイヤーがピンチの時には仲間NPCが助けに行くように指示をだします。

マイメイト

マイメイト」という、AIがFXの売り買いを提案してくれるアプリがあります。急に投資の話がでて驚かれたかもしれませんが、このアプリのAIにはゲームAIで培われた技術が用いられています。投資はゲームだ、という知り合いが私にもいますが、まさに投資をゲームだと置き換えてゲームAIの手法を使って大成功した例です。事実、FXはゼロサムゲームであり、利益という形で勝敗を定義することができるので非常にゲームに近い性質を持っています。使われている手法も強化学習をベースとしたGoogleのAlphaGoでも使われている非常に有力な手法です。

この例のように、現実の問題をゲームに置き換えることができればゲームAIの手法を使ってビジネスチャンスをつかむことができるかもしれません。私自身も資産運用系の問題には強化学習が良い成果をだすのではないかと考えており、不動産の価格予測などで使用できる可能性があると思っています。他には自動運転などでも強化学習は活用されています。とる行動がはっきりしている課題などでも、AIの強化学習が成果を出す可能性はありそうです。

まとめ

ゲームAIと人との関係というのは競争相手という立場から人の活動に役立つものに変わってきています。今回紹介した以外にもたくさんの事例や、活用方法が研究されています。ゲームとAIという点では少し視点は変わりますが、弊ブログでは以下のような記事も掲載しております。ぜひ読んでみてください。

【ゲーム業界必見】ゲーム開発におけるAI・データ活用の可能性を探る

もちろん、AIと人の関係性の変化というのはゲームという分野に限らず様々な分野で起きています。これからの時代はよりAIが周りにある環境に慣れていくこと大切になってくるでしょう。ある意味プロ棋士というのは最もうまくAIとの関係に順応した人たちなのかもしれません。

参考文献

「藤井棋聖は時限爆弾を解除し続けた…」将棋中継をドラマチックにする「SHOGI AI」の“人間味” 開発責任者が明かす秘話

ゲームAIの進化と歴史

コンピュータ将棋プロジェクト終了宣言

FFXVゲームAI開発者・三宅陽一郎が示す“創る人”の未来「エンジニアは外に出ろ。見て、感じて、人間を知れ」

 

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WRITER
木村勇太

Yuta Kimura

木村   勇太 木村勇太

2020年入社の新入社員。データデザイン部で職場体験中。

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