AI導入のための社内政治学Ⅰ

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AI(機械学習)のブームは尾を引き、2020年頃からのDXへの注目も相まって、引き続き多くの企業が活用を検討しています。さらにデータやデジタル技術の利用が進めば、より多くの分野でAIの活用が進むでしょう。

一方で、多くの企業では、AIの活用は部分的で、組織全体で活用が進んでいるとはいえません。事例としてメディアやイベントで注目される事例はありつつも、社内の隅々までAIの活用が進んでいるという企業は0に近いでしょう。

データやデジタル技術、そして最先端のAI技術の活用がさらに活発化することが予想される今、社内組織をAI導入のために最適化し、その中でAI導入担当者は、社内政治力を発揮していかなければいけません。

この記事では「AI開発のための社内政治学」というテーマで、AI開発に必要な社内政治力について解説していきます。

社内政治とは

社内政治というと「私の会社は風通しがよいので社内政治が必要ない」と楽観的な人もいれば、社内の組織の複雑さから、どうしても重苦しいイメージを持ってしまう人もいるかもしれません。

さまざまな業種、さまざまなポジションの人がいる企業内部では、さまざまな圧力が交差してており、社内政治と関係がない企業はありません。社内政治は関係ないと、しらを切ってしまうのは返って危険です。

著書『伸びる女の社内政治力』などで有名な関下昌代さんによると、社内政治の定義は以下とされています。

会社のことをよく知り、敵をつくらず、味方を増やし、自分の居場所を確立して最終的に考えやアイデアを実現していく。

しかし、多くのAIの導入担当者にとって、社内政治は後回しにされがちな存在です。悪化した人間関係のために企画が通らなかったり、稟議や予算が承認されなかったり、期待していた評価が得られなかったり、むしろAI導入の壁となりがちです。次章以降で詳しく述べますが、AIの導入担当者にとって、社内政治は切っても切り離せない存在です。複雑なプロジェクトを成功させるために、社内のあらゆる場面を調整していかなければなりません。

また、「AIの知識をつけるほうが楽しい」と思う人が多いAI分野では、AIの知識をつけたり、トレンドを理解することも重要で、社内政治が後回しにされてしまうこともあるでしょう。

なぜAI開発に社内政治が必要なのか

では、なぜAI開発に社内政治が重要なのでしょうか。この記事では3つのポイントを解説します。

部署をまたいだ連携の重要性

AIの導入に社内政治力が必要な理由は、部署をまたいだ連携が重要だからです。

AIの活用を進める上で、法務部と連携して契約や導入後の法律への定職がないかをチェックする他ほか、情報システム部と連携し、既存システムとの互換性を確かめるなど、部署をまたいだ連携が頻繁に発生します。

AIを導入する企業は、AIの導入を担当する専門の部署が設定されていて、プロジェクトを担う部署と導入する部署が違う場合もあります。この場合、現場の課題をAI導入を担当する部署が正確に理解していなくては、AIの導入が完了しても成果をあげることはむずかしいでしょう。

さらに、AI開発に必要なデータを、他部署から調達しなければいけないケースもあるでしょう。だからこそ部署をまたいだ連携が必要です。

AIの開発は、通常のシステム開発と違い、契約からデータの活用など、複数の部署の連携が必要になります。

この中でも重要なのはAIを導入する現場の部署とAI導入の推進部署との連携です。多くの場合、AIを導入する現場は、その企業にとって第一線の現場であることが多く、常に密なコミュニケーションをとり、課題を把握しておく姿勢が重要でしょう。

部分最適のAI活用ではDXにつながらない

近年、AIのトレンドから、DXに注目が変異しています。

AIの注目が集まった2010年代後半では、部分的なAIの活用が非常に注目を集め、技術革新とともに、さまざまな企業でAIの活用が進みました。特にディープラーニングによる画像認識の精度向上によって、工場での異常検知などのソリューションが多く誕生しました。

一方で、AIの活用は特定の部署の特定の業務に留まり、組織全体で戦略的に活用されているケースは多くありません。

現在のAIは「技術」ではなく「戦略」の中に組み込まれ、デザインされなければいけません。AIをどのように企業戦略に落とし込んでいくのかが重要になっています。

日本経済産業省は2018年に発行した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」にて、以下の定義をまとめています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

つまり、部分最適のAI活用ではなく、全体最適でAIを導入していく重要性が高まっています。また、全体最適でAIを導入していくには、ソフトウェアやデータを保持する基盤の整備も重要です。DXの定義にあるように、今、部分的にAIなどの技術を活用するのではなく、組織や業務のプロセス、企業文化などを変革し、競争上の優位性を確率していくことが重要です。

上記のような変革が企業に求められている今、社内政治の重要性も急激に高まっています。全社をまとめて、デジタル戦略に落とし込むためには、さまざまな部署の利害関係を考慮したデザインが重要です。

また、企業の上位レイヤーから下位レイヤとのコミュニケーションも重要です。現場の現状を理解せずに、全体的な戦略をデザインしては、空虚な戦略となってしまいます。また、現場側も適宜、経営層に対して現状を報告する必要があります。

意思決定の速さが重要

意思決定の速さが重要になっている点も社内政治が重要になっている理由です。

AIの分野では常に新しいサービスが生まれ、トレンドも変化しています。新しいモデルが開発されれば、産業に与えるインパクトはとても大きくなります。特に自然言語処理の分野では、汎用的なモデルが近年、次々に発表され、精度が日々向上し、その波にいち早く乗れるか否かが競争優位性を保てるかどうかに繋がります。

トレンドが急激に左右するからこそ、社内の意思決定の重要性が高まっています。特に新しくプロジェクトを立ち上げる際に、予算や稟議をスムーズに通すためには、上位レイヤーとの日頃のコミュニケーションが重要です。

トレンドにあわせて戦略に合わせて戦術を軌道修正していくには、経営層などの上位レイヤーが考える方向性を理解し、その意図にあわせて提案するなど、社内政治力が求められているといえます。

まとめ

この記事では、前半として社内政治とはなにか、なぜAIの導入に社内政治が求められているかについて解説してきました。

後半では、AI導入で社内政治を成功させるためのポイントをより具体的に説明していきます。

 

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WRITER

 

  Asei AI/DX専門ライター「Asei」

AIやDXなどが専門のライター。累計執筆数500本以上。 「曖昧な技術を具体的に」を心がけ、トレンドに合わせてさまざまな視点から発信します。フリーのフォトグラファーも。

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