カメラ撮影とカメラ画像の取扱いルールと注意点

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カメラを使って対象物=被写体の観察や比較、記録、識別、分別をするなど、カメラの利用がとても身近なものになってきました。
ただ、「撮れるから」といってもそこにはルールがあったり、配慮が必要な場合がありますので整理してみましょう。

最近のカメラの種類

カメラといえば、身近なところだとこんな感じですね。

身近なカメラ
A:スマホ、B:デジカメ、C:ビデオカメラ

最近は、片手持ちのタイプや身に付けるタイプなどバリエーションが増えてきました。

増えてきたカメラの形
D:アクションカメラ、E:ボディカメラ、F:カメラ内蔵メガネ

さらに、車に取り付けたり、飛ばしたりできるカメラもありますね。

ドラレコとドローン
G:ドライブレコーダー、H:ドローンカメラ

こんな風に家庭で使う見守りカメラも一般的になってきました。

見守りカメラ
I:据え置きカメラ、J:見守りカメラ

建物の屋内や屋外のに設置されたものカメラも目につきます。

監視カメラ
K:監視カメラ、L:防犯カメラ

「見守り」「監視」「防犯」など、用途を限定しているようなカメラもありますが、ほとんどのカメラはネット接続ができて用途が特定出来なかったり、カメラの形が違えど人にカメラを向けるとさまざまな問題を引き起こすことがあるので規範(ルール)が存在します。

カメラ利活用の規範

カメラを顔認識や人物行動追跡に適用される規範を俯瞰的にまとめた資料「『パーソナルデータ分野に関する ELSI 検討』報告書」がデータ社会推進協議会(現データ社会推進協議会)から公開されています。

※「パーソナルデータに関するアーキテクチャ(検討一覧表)」の見方について
顔照合、人物行動追跡、医療情報の各項目の関連度合い、さらに各規範の執行 性・拘束力を★の数(1~3)で区別し、事業展開を行う際に事業者がアーキテ クチャを俯瞰できるような仕組みとなっている。各規範のより詳細な説明・解説 は、「すべてのプロフィール」と呼ばれる部分で行う。

<パーソナルデータに関するアーキテクチャ(検討一覧表)>
カメラ画像の取り扱い規範

出典:ELSI検討報告書(Word版のPDF)
公開ページ:2019年度SIPパーソナルデータ分野アーキテクチャ構築DTA公開

 

ELSI検討報告書では、「地域・民族・宗教による受容性の違い、消費者と事業者との関係性によって事業者にとって予期せぬ反対運動や抗議につながってしまう。さらに、これらは、プライバシー設計に必要な観点として配慮する必要がある」としています。
特に顔認識規制に対する考え方は、日本と異なり国際社会で厳しくなっていますし米国における法制化のニュースも飛び込んできましたのでくれぐれも注意しましょう。

※「米国で高まる「顔認識」規制の気運、自主規制から近く法制化へ」MIT Technology Review by Tate Ryan-Mosley2021.05.24

「カメラ画像利活用ガイドブックver2.0」

IoT 推進コンソーシアム/総務省/経済産業省が発行した「カメラ画像利活用ガイドブックver2.0」は、事業者向けに法律に記されていないプロセスや配慮内容がまとめられているので参考になると思います。

4. 1 基本原則
カメラ画像が、特定の個人の識別が可能な画像であれば、個人情報の取得にあたる。取扱いにあたっては、個人情報保護法を遵守すると共に以下の対応が必要である。

a.取得・処理・保存・利活用の各過程におけるデータのライフサイクルを定めると共に、データが記録・保存される機器やサーバ群、及びネットワーク上の各所における責任主体を定め、リスク分析を適切に実施すること。

b.データの取得と利活用にあたっては、運用実施主体を明確に定め、相談や質問・苦情等を受け付けることのできる一元的な連絡先を設置すること。

c.データの取扱いや利活用については、一元的な連絡先の設置と対応のみならず、カメラ設置場所周辺で勤労する従業員等に対する教育を実施する等、生活者が一貫した説明を受けられるような施策を実施すること。

d.運用実施主体は、生活者に、事前告知や取得時の通知等で、空間(店舗等)におけるカメラ画像利活用に対し適切なコミュニケーションを図ること。
また、利用目的等についても、可能な限り生活者にわかりやすく伝えるとともに、カメラ画像利活用に係る生活者のメリットを説明し、丁寧に理解を得る努力をすることが望まれる。
また必要に応じ、限られた空間(店舗等)から利活用を開始して、生活者の理解を醸成してから空間(店舗等)を拡大すること等、段階的に実施することも生活者の理解を得る手段として考えられる。
更に、生活者がカメラ画像利活用のメリットを実感しているか、不満が無いかといった意見をくみ取り、利活用方法の改善を継続的に検討する等、生活者との対話の努力をすることが望ましい。

e.パブリック空間を撮影する場合、設置場所の自治体で定められる条例を遵守すること。

 

●自治体がカメラを設置した加古川市の事例

d項の、「適切なコミュニケーション」、「利用目的等……丁寧に理解を得る努力」、「理解を醸成」、「生活者との対話の努力」など抽象的なことにどこまで対応するのか判断が難しいケースもあります。
最も丁寧にデータ主体とコミュニケーションをとっている例の一つとして、自治体がカメラを設置した加古川市をご紹介します。
平成29年度は通学路や学校周辺を中心に900台の見守りカメラを設置し、平成30年度は公園周辺や駐輪場周辺、主要道路の交差点などを中心に575台の見守りカメラを設置しました。
加古川市のホームページ※では見守りカメラの概要と効果が記載され、犯罪抑止効果が一目でわかります。
※加古川市見守りカメラ

ここで注目されるのは見守りカメラ設置に至るプロセスが検証できるようになっていることです。
さらに、その成果を広報することで事業への理解と評価を得る活動を行っています。それが公開されている記録にしっかり記載されています。

<加古川市の見守りカメラ導入プロセス>
加古川市プロセス

自治体は住民サービスとして事業を行いますので、係る費用は税金でありその便益が住民の理解を得なければ実施できませんので、ここまで対応できているのは良い参考事例だと思います。

●監視カメラの撤去に関する事例

c項の事例として、平成22年 4月に衆議院にて”衆議院議員柿澤未途君提出郵便局の「間仕切り」及び監視カメラの撤去に関する質問に対する答弁書”に関するやり取りがありました。
監視カメラは一部に不適切な配置があったことにより労働の過剰監視につながり職員の士気を失わせるなどの弊害を及ぼすとされ撤去に至ったようです。
日経新聞※によれば、郵便局内の間仕切りは郵政民営化に伴って銀行業務と郵便事業を局舎内で分けるために設けられもので、監視カメラは局員に向かって設置し民営化後に増設したとしています。
※「局員監視カメラ、撤去に32億円 日本郵政」日本経済新聞2010年4月9日 18:20

郵政に関わる政治家も多くニュースになったものですが、そもそもは「労働の過剰監視」の問題です。労働監視がすなわち違法ではありませんが、従業員が勤務中に疑わしい行動をしないとか、従業員の一挙手一投足を都度細かくチェックしないとか、プライバシー侵害とかパワハラの議論の前に信頼関係を構築することがポイントになります。

●ガイドブックが示すユースケース

さて、ガイドブックには、以下の6つのユースケースが掲載されています。

  • 適用ケース(1) 店舗内設置カメラ(属性の推定)
  • 適用ケース(2) 店舗内設置カメラ(人物の行動履歴の生成)
  • 適用ケース(3) 店舗内設置カメラ(リピート分析)
  • 適用ケース(4) 屋外に向けたカメラ(人物形状の計測)
  • 適用ケース(5) 屋外に向けたカメラ(写り込みが発生し得る風景画像の取得)
  • 適用ケース(6) 駅構内設置カメラ(人物の滞留状況把握)

それぞれ事前の告知、取得時の通知、取扱いや管理について、

  • 自社 HP 上での掲載
  • 店舗入口や通路上での掲示 (ポスター、ステッカー、告知文面)

など例示がまとめられています。
ガイドブックが公開されてから炎上事例は聞いたことが無いため、うまく機能していると思われます。

カメラの扱いはまだまだ議論の途中のこともあります。特に、カメラを身に付けるタイプ(グラス型、ボディカメラ)を公共の場所で使うのは気を付けましょう。

カメラ画像と個人情報

例えば、「顔をぼかした映像」であっても、服装や持ち物、同行者によって本人を識別できたりします。

“特定の個人を識別する”とは

  • もう一度見たら同じ人と判る「いつも同じ時間に来る3姉妹の常連さん」
  • 探している人に判る迷子案内のアナウンス「青いリュック、青いTシャツに青い半ズボン、5歳ぐらいの男の子」
  • それぞれ「ピンク、緑、紫の上着を着ている20代女性の3人組の中のピンク」

など特定の飲食店、特定の時間と場所を伴っているケースもありますが、当事者にとっては特定できますね。
「同じ時間に来る3姉妹」だと情報としては情報を共有できる範囲は狭いのですが、ショッピングモール等の特定し施設に入場していてそれぞれ「ピンク、緑、紫の上着を着ている20代女性の3人組の中のピンク」の情報があれば特定できそうです。画像を参照しなくても個人を特定する見た目の情報は文字にできるので、顔情報は必須ではありません。
3人組と迷子

まとめ

カメラ画像の取り扱いは、憲法13条プライバシー権(自己情報決定権、肖像権)、個人情報保護法、「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」で規律されます。実際の運用では「カメラ画像利活用ガイドブック」が参考になりますし、ご紹介した加古川市や郵便局の事例などを参考にしながら、社会や文化的な背景も含めた不安や心配、疑問に丁寧に対応していただければと思います。

 

【参考】

●「個人に関する情報」とは

「個人に関する情報」とは、氏名、住所、性別、生年月日、顔画像等個人を識別する情報に限られず、個人の身体、財産、職種、肩書等の属性に関して、事実、判断、評価を表す全ての情報であり、評価情報、公刊物等によって公にされている情報や、映像、音声による情報も含まれ、暗号化等によって秘匿化されているかどうかを問わない。
~中略~
事例3)防犯カメラに記録された情報等本人が判別できる映像情報

出典:個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)

●「『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン』及び『個人データの漏えい等の事案が発生した場合等の対応について』に関するQ&A」より

Q1-13
カメラ画像から抽出した性別や年齢といった属性情報や、人物を全身のシルエット画像に置き換えて作成した移動軌跡データ(人流データ)は、個人情報に該当しますか。
A1-13
個人情報とは、特定の個人を識別することができる情報をいいます。性別、年齢、又は全身のシルエット画像等による移動軌跡データのみであれば、抽出元の本人を判別可能なカメラ画像や個人識別符号等本人を識別することができる情報と容易に照合することができる場合を除き、個人情報には該当しません。

Q1-13-3
電光掲示板等に内蔵したカメラで撮影した本人の顔画像から、性別や年齢といった属性情報を抽出し、当該本人向けにカスタマイズした広告を電光掲示板等に表示しています。属性情報を抽出した後、顔画像は即座に削除しています。個人情報保護法上、どのような措置を講ずる必要がありますか。
A1-13-3
カメラにより特定の個人を識別できる顔画像を撮影した場合、個人情報を取得したことになりますので、不正の手段による取得とならないよう、事業者はカメラが作動中であることを掲示する等、カメラにより自身の個人情報が取得されていることを本人が容易に認識することが可能となる措置を講ずる必要があります。
また、個人情報取扱事業者が、一連の取扱いにおいて、顔画像を取得した後、属性情報を抽出した上で、当該属性情報に基づき当該本人向けに直接カスタマイズした広告を配信する場合、当該顔画像を直ちに廃棄したとしても、当該顔画像について、特定の個人を識別した上で、広告配信を行っていると解されます。このように顔画像を取り扱う場合には、その利用目的をできる限り特定し、あらかじめ公表するか、又は個人情報の取得後速やかに本人に通知若しくは公表するとともに、当該利用目的の範囲内で利用しなければなりません。
(平成 30 年 12 月追加)

出典:「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」及び「個人データの漏えい等の事案が発生した場合等の対応について」に関するQ&A

●個人情報の定義

第二条 この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。
一 当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等(文書、図画若しくは電磁的記録(電磁的方式(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式をいう。次項第二号において同じ。)で作られる記録をいう。第十八条第二項において同じ。)に記載され、若しくは記録され、又は音声、動作その他の方法を用いて表された一切の事項(個人識別符号を除く。)をいう。以下同じ。)により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)
二 個人識別符号が含まれるもの

出典:個人情報保護保護法

●“容易に照合”とは

事業者の実態に即して個々の事例ごとに判断されるべきであるが、通常の業務における一般的な方法で、他の情報と容易に照合することができる状態をいい、例えば、他の事業者への照会を要する場合等であって照合が困難な状態は、一般に、容易に照合することができない状態であると解される。

出典:個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)

●“個人識別符号”とは

「個人識別符号」とは、当該情報単体から特定の個人を識別できるものとして個人情報の保護に関する法律施行令(平成15年政令第507号。以下「政令」という。)に定められた文字、番号、記号その他の符号をいい、これに該当するものが含まれる情報は個人情報となる(2-1(個人情報)参照)(※)。

具体的な内容は、政令第1条及び個人情報の保護に関する法律施行規則(平成28年個人情報保護委員会規則第3号。以下「規則」という。)第2条から第4条までに定めるとおりである。

政令第1条第1号においては、同号イからトまでに掲げる身体の特徴のいずれかを電子計算機の用に供するために変換した文字、番号、記号その他の符号のうち、「特定の個人を識別するに足りるものとして個人情報保護委員会規則で定める基準に適合するもの」が個人識別符号に該当するとされている。当該基準は規則第2条において定められているところ、この基準に適合し、個人識別符号に該当することとなるものは次のとおりである。

出典:個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)

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タイトル:建設業におけるDXの実践例

視聴形式:動画配信(フォーム入力不要)

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WRITER

Atsushi Kuromasa

黒政   敦史 Atsushi Kuromasa

●外部参加団体や活動・・・情報処理学会 電子化知的財産・社会基盤研究会(EIP) 幹事、CSS2021 PWS2021実行委員、情報法制学会 会員など。 ●最近の論文・寄稿・・・「"匿名加工されたデータの利活用に向けた課題","黒政敦史","学術雑誌『情報通信政策研究』3巻2号"」、「"PWSCUP2020コンテスト:AMIC ("Anonymity against Membership Inference" Contest)", "千田 浩司 , 荒井 ひろみ , 井口 誠 , 小栗 秀暢 , 菊池 浩明 , 黒政 敦史 , 中川 裕志 , 中村 優一 , 西山 賢志郎 , 野島 良 , 長谷川 聡 , 波多野 卓磨 , 濱田 浩気 , 古川 諒 , 山田 明 , 渡辺 知恵美","コンピュータセキュリティシンポジウム2020論文集,1245-1252 (2020-10-19) "」、「"PWS Cup 2019: ID識別・トレース推定に強い位置情報の匿名加工技術を競う", "村上 隆夫,荒井 ひろみ,井口 誠,小栗 秀暢,菊池 浩明,黒政 敦史,中川 裕志,中村 優一,西山 賢志郎,野島 良,波多野 卓磨,濱田 浩気,山岡 裕司,山口 高康,山田 明,渡辺 知恵美","コンピュータセキュリティシンポジウム2019論文集,2019,1485-1492 (2019-10-14) "」、 「"匿名加工情報および非識別加工情報の運用整理と利活用に関する考察", "黒政 敦史", "情報処理学会 研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP),2019-EIP-84(2),1-8 (2019-05-27) , 2188-8647"」、「"個人データの保護と流通を目的とする匿名化と再識別コンテスト:PWSCup", "小栗 秀暢 ,黒政 敦史,中川 裕志,菊池浩明,門田 将徳", "情報処理学会デジタルプラクティス Vol.9 No.3 (July 2018)"」、「"ビッグデータの加工・取扱 -匿名加工情報の役割と活かし方-", "黒政 敦史", "情報処理Vol.59No.4Apr.2018 小特集 情報社会 -今そこにある課題-"」、「"匿名加工情報の加工方法と有用性・安全性指標の考察~匿名加工・再識別コンテスト2017から~", "黒政 敦史 , 小栗 秀暢 , 門田 将徳", "情報処理学会 研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP),2017-EIP-78(9),1-8 (2017-11-22),2188-8647"」

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