あなたの睡眠負債は大丈夫? 睡眠データの取得と可視化について ~ 身近なデータシリーズ① ~

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こんにちは、データエンジニアの福本です。
近年データ活用やAIが注目され、ビジネスとして調査や検討をされている方も多いかと思います。ただ、ビジネスの題材として扱うとなると考えないといけないことが多く、必要以上になんだかすごくて難しいものだと感じてしまいがちです。

そこでデータ活用やAIをもっと身近に感じていただけるよう、身の回りのデータやAI活用を取り上げた「身近なデータシリーズ」を始めてみました。統計的な情報等よりも個人で取得・活用できるデータを中心に取り上げていきますので、気になったものはご自身で試してみていただくことでデータ活用やAIについて知っていくお役に立てると幸いです。

第一回目のテーマは「睡眠」です。
最近「睡眠負債」のキーワードで注目を集め、仕事のパフォーマンスへの影響の大きさも認知されてきていますね。自分の睡眠を改善したいと感じている方も多いのではないでしょうか。
それでは睡眠に関するデータやその活用について見ていきましょう。

そもそも質の良い睡眠とは

睡眠というととにかく睡眠時間を確保することに目がいきがちですが、睡眠には質の良し悪しが存在します。(もちろん一定以上の睡眠時間を確保することは重要です。)
睡眠状態は脳波と眼球運動のパターンで分類され、急速眼球運動を伴うレム睡眠(浅い睡眠)と、脳波の状態で4段階の深さに分かれるノンレム睡眠(深い睡眠)があります。睡眠中はこれらの状態(加えてごく短時間の覚醒状態)を周期的に行ったり来たりしています。質の良い睡眠では睡眠開始から早い段階で深いノンレム睡眠が現れ、約90分周期でレム睡眠とノンレム睡眠を行ったり来たりしつつ、徐々にレム睡眠や浅い睡眠の割合が多くなっていくと言われています。

睡眠段階と睡眠経過
出典:ねむりラボ

しかし、眠っている本人が自分の睡眠の深さを認識することはできないため、センサデバイス等を利用して情報を得る必要があります。睡眠センシングを行う各サービスでは、睡眠の深さの推移をグラフで可視化したり、睡眠の質をスコア化したりすることで、ユーザーにとって分かりやすい形式で睡眠データを提供してくれるため、そこから自分の睡眠について知ることができます。
また、サービスを利用することで睡眠の質に加えて睡眠時間や入眠・起床時間を自動的に記録することができるため、長期的な傾向を見て生活リズムに気をつけるといった行動の変化を起こしやすくなります。

「睡眠負債」というキーワードが注目を集めたと書きましたが、これは睡眠不足が積み重なることで様々な不調をもたらす現象のことです。一日あたりは少しの睡眠不足でも、借金のように積み重なることで大きな影響を与えることからこのように言われています。
睡眠負債の状態を簡単に計測する方法はまだ確立されていませんが、毎日の睡眠の状態を知ることで負債の返済に向けた行動は取りやすくなります。

睡眠に関するデータの収集

正確に睡眠状態を知るには脳波と眼球運動を計測することが望ましいですが、自宅にそれらを計測する装置を導入するのは現実的ではありません。そのため、別の指標を組み合わせることで睡眠の状態を予測する手法が取られています。(ヘッドギア型の脳波測定デバイスも徐々に登場してきてはいますが、まだ実験段階のものが多くあまりメジャーではありません。)

睡眠状態の予測に使われるデータとしては以下のようなものがあり、これらをデバイスで取得して予測結果をアプリなどで確認できるサービスが数多くあります。
デバイスのタイプも色々ありますが、時計型や指輪型のような手首や指に付けて使うウェアラブルタイプとマットレスや枕の下に敷いて使うシートタイプの二種類がメジャーです。ウェアラブルタイプは睡眠以外にも歩数などアクティビティに関するデータを収集できるものが多く、シートタイプは睡眠に特化していて室温や湿度など室内環境のセンサーも付いているものがあります。最近だとマットレスとセンサーが一体になっているものもあります。
※記事の最後にメジャーなデバイスをいくつかご紹介しています。

1.心拍

睡眠中の状態によって心拍数や心拍の周期性の特徴が変わるため、心拍の変化から睡眠状態の変化を推定することができます。
ウェアラブルタイプのデバイスの場合、皮膚に光をぶつけて血液から反射してきた光の変化を見ることで心拍の情報を取得します。
シートタイプのデバイスの場合、圧力センサーを利用して脈動により微小な圧力の変化から心拍情報を取得します。

 2.体の動き

睡眠状態によって寝返りの有無や頻度が変わるため、睡眠状態の推定に活用できます。
加速度センサーや圧力センサーによって取得しますが、ウェアラブルタイプの場合手だけを動かしても加速度センサーが大きく反応してしまうため、ノイズが入りやすいと言われています。

 3.呼吸

呼吸も睡眠状態によって規則性や回数、深さが変わります。
シートタイプのデバイスでは心拍と同様に圧力の変化から呼吸回数を取得します。
ウェアラブルタイプの場合、呼吸数を取得できるものはあまりありませんが、赤血球から反射する光の色から血中酸素飽和度(SpO2)という値を取得できるものが増えています。この数値は血液中のヘモグロビンがどの程度酸素を運んでいるかを表すもので、これを取得することで無呼吸症候群など睡眠中の呼吸トラブルを知る手がかりになります。

4.音声

睡眠中の活動としていびきや歯ぎしりを音で認識します。これらは睡眠の質を低下する要因になります。
シートタイプの中には音声認識機能がついているものがある他、スマートフォンアプリにも睡眠中のいびきや歯ぎしりのログを記録してくれるものがあります。

予測の仕組み

睡眠に関連深いデータを取得できることは分かりましたが、ここからどのようにして睡眠状態を予測しているのでしょうか。
アルゴリズムの詳細は各社の事業のコアテクノロジーのため公開はされていませんが、おそらくデバイスデータと同時に脳波などを測定したデータセットを使って教師あり機械学習を行っていると思われます。これは正解(睡眠状態)が分かっている状態のデータを使って各データの関連を表現できる数式を組み上げておくことで、ある値が分からなくても他の値を埋めて数式を計算することで分からない値を算出できるようにするものです。
数学の問題でxが分かればyが分かるような式を変数を増やしてとても複雑にしたものを機械学習で作成していると思っていただければOKです。

予測イメージ

このように、直接取得するのが困難なデータを比較的簡単に取得できるデータと組み合わせて測定したデータセットを用意してモデルを作成し、後者の数値から前者を予測する手法は様々な応用が可能です。
舌の画像と口臭の計測値の組み合わせを学習させることで撮影した画像だけから口臭値を予測したり、不動産物件の面積や築年数と売買履歴のデータを学習させることで物件情報から不動産の価値を予測したりできます。

まとめ

身近なデータをテーマに、睡眠の関するデータについて紹介しました。新型コロナの影響で環境が変わってしまった方も多いかと思いますので、心身の健康のためにもご自身の睡眠データを計測して改善を図ってみてはいかがでしょうか。
今回は睡眠そのものに焦点を当てましたが、次回は睡眠の質を改善する指標についてまとめていきたいと思います。

参考:センサデバイスのご紹介

本記事を読んで自分でも何か買って試してみたいという方に向けて、有名なセンサデバイスをいくつかご紹介します。
ここでご紹介するものはごく一部なので、これらを参考にしつつ自分が欲しい機能をもったデバイスを探してみてください!

Fitbit
https://www.fitbit.com/

IoT黎明期に注目を集めた健康系ウェアラブルデバイスの先駆け的存在で、睡眠に限らず歩数や心拍、消費カロリー計算など健康に関するセンサーや機能を数多く備えています。
ヘルスケア以外の機能が豊富なスマートウォッチの台頭への対応が遅れたことで近年では市場シェアで苦戦していますが、健康志向のファンからは根強い人気があります。
昨年Googleが買収計画を発表し話題になりました。筆者もFitbitユーザーなので巻き返しに期待したいところです。

Garmin
https://www.garmin.co.jp/

AppleWatchについで世界二位のシェアを誇るスマートウォッチ型デバイスで、Fitbitと同じく睡眠だけでなくヘルスケア系の機能を多数備えています。特徴的なのはストレスレベルの計測と、活動によるエネルギーの消耗と回復を可視化する Body Battery 機能がついていることです。
他にもダイビングやゴルフなど特定のスポーツに関連したデータを取得することに特化したモデルなど、ラインナップが非常に豊富です。

Withings
https://www.withings.com/

Withingsはスマートウォッチや体重計、血圧計など多くのIoTデバイスを販売しているフランスのメーカーで、それらのデータを一つのアカウントに集約することで総合的に健康管理を行うことができます。
その中の一つであるWithings Sleepはマットレスの下に敷いて使うシート型の睡眠トラッキングデバイスで、睡眠サイクルやいびき、心拍数などをセンシングします。
また、IFTTTというサービス間連携サービスと組み合わせることで、他のIoTデバイスと連携して睡眠開始を検知して電気を消すなど、様々な便利な仕組みを実現することができます。

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WRITER
Kazuya Fukumoto

エンジニアチームリーダー

福本   和哉 Kazuya Fukumoto

主にデータ分析基盤の設計構築や、開発プロジェクトのPM・PLを担当。JDLA Deep Learning for GENERAL 2018 #1、認定スクラムマスター(CSM)、GCP Professional Cloud Architect

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