AI内製化をはじめるための最初期チーム-データサイエンティスト採用の前に

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Photo by Alvaro Reyes on Unsplash

事業会社におけるAIシステムの内製化は、DXの流れの中で非常に注目されています。本稿では、内製化をはじめるためのチーム編成について、成功確率が比較的高いと思われる例についてご説明します。

はじめに

こんにちは、データデザイン部の金岡です。事業会社におけるAIシステムの内製化は、DXの流れの中で昨今非常に注目されています。AIの内製化をはじめる際、推進するチームには複数なパターンがあるかと思われます。例えば新規事業推進室や情シス、マーケティング部門など、部門は様々です。またこれらの担当部門経由で開発をアウトソースしたり、コンサルタントにアドバイスをもらうなどのケースもあるかもしれません。おそらく正解は1つではないでしょう。

一方で、多様な業種のAI開発をご支援してきた実績から、「成功確率が比較的高い初期チームのパターン 」がおぼろげながら見えてきました。
今回はその一例についてご説明します。

前提

本稿で対象とするのは、以下のケースです。

  • 主軸事業はリアルな物品の販売やサービスの提供(流通や不動産、製造業など)
  • 今後の計画で自社データを用いたAIの利活用が方向性として決まっている
  • アドホックな分析・小さな改善よりはAIを用いた新規サービスへの期待が高い
  • 従来はシステム関連はベンダーに任せてきたが、コスト面、スピードの観点で内製化を進めたい。必要なロールは育成したり、ヘッドハンティングすることはいとわない

立ち上げ期にデータサイエンティストだけを採用すると失敗するかも

ゼロベースでプロジェクトを開始するとき、事業会社の中にはデータサイエンティストをヘッドハンティングするケースも見受けられます。しかしこの段階でデータサイエンティストを呼ぶのは実はミスマッチだと思われます。

AI導入プロジェクトはゴール設定、自社システムの全体像の把握(データがどこにあるか、使える状態なのか)、データ抽出、分析&モデリング、モデルを利用できるサービス化という流れを踏みます。プロパーでないデータサイエンティストをいきなり放り込んでも成功する確率はかなり低いです。データサイエンティストは多くの場合、「分析&モデリング」が主務であり、ビジネス上の判断はドメイン知識のある人が実施すべきだからです。分析の良し悪しの判断もビジネス上のKPIやドメイン知識に多く依存します。シニアなデータサイエンティストは、特定のドメイン知識をもっているケースが多いですが、いきなりそのような人員が採用できるとは限らないでしょう。

さらに言えば、初期は幹部や関係各所への情報収集・プロジェクト説明などコミュニケーションタスクに忙殺されることになります。これらはドメイン知識も関係ない人間関係の話が絡んできます。新任のデータサイエンティストがそのようなタスクを実施するのは極めてストレスフルで、場合によっては早期離職してしまうかもしれません。

また、データサイエンティストは必ずしもAIのサービス化=ソフトウェア開発に長けているわけではありません。数学や物理、経済学のバックグラウンドからデータサイエンティストになる人も多く、システムを一通り作ったことのある人は意外といません。AIプロジェクトの全工程をサイエンティスト1人で担えるかといわれると、限りなく厳しいのが実情です。内製化のためにいきなりデータサイエンティストを雇えばいいという話ではないと読者の皆様もご理解いただけるのではないでしょうか。

AIプロジェクト立ち上げに必要な「2人」

そこで立ち上げ期におすすめなのが以下の2人のチームです。

  • プロダクトオーナー1名 : ドメイン知識も十分な、一定の社歴を持つプロパー。「DIVA」「PRD」を書ける程度の知識が必要。
  • ソフトウェアエンジニア1名 : 中途でもOK。業務システムやウェブアプリケーションなど、「ユーザーが触るシステム」の実装経験が必要。

AIプロジェクトの最初期において重要なのは「なにを、なぜ作るか」の定義です。最初期は様々な関係部門からのヒアリング、ドメイン知識に基づいた課題定義と優先度判断、開発プロジェクト化を実施しなければなりません。さらに成果物ができたらこれを導入したり、営業をかけたりということが必要です。事業会社の中でこれを横断してできるのは一定の社歴のあるプロパーの方のみでしょう。「プロダクトオーナー」であるこの社員は責任をもって、AI開発における背景や仕様情報を整備します。なお、このプロダクトオーナーはシステムやデータサイエンスに関する専門的な知識は不要ですが、DIVA(AI開発において必要な情報をまとめるフレームワーク)、PRD(プロダクト要求仕様書)をまとめる知識をつける必要があります。それに関しては別の記事にまとめてるので、よろしければご覧ください。AIの基礎知識としてはいわゆる「G検定」もおすすめです(私も取得しています)。

そして、プロダクトオーナーの抽出した「なにを、なぜ作るか」を形にする上で重要になるのがソフトウェアエンジニアです。AIプロジェクトの初期には必ずしもデータサイエンティスト・機械学習に長けた人員は必要ないというのが私の考えです。それよりも大事なのは「データモデルを理解し」「動作・ユーザーが触れるデモ、システムを開発でき」「外部APIやサービスもリサーチすれば使える」人員だと思います。海のものとも山のものともつかないAIを導入するのであれば「何回も試す」ことが何より重要です。最初期はモデルの部分に学習済みモデルをAPI化したものやAutoMLサービス(モデリングをクラウド上で実施できるツール)を利用、業務の課題解決になりそうなシステムをソフトウェアエンジニアと作ることをおすすめします。

以上のようなアプローチ、チーム編成をとるのは、利用者である社内や社外のユーザーはAIよりも課題解決の手段を必要としているからです。まずは会社にAIによるシステムが課題解決になると認識させることが内製化の第一歩です。
このチームでAIプロジェクトを試行錯誤すれば、課題解決となるシステム(ゴール)の全容、自社のデータの現状と理想的な状態をスピーディに把握できます。社内外の信頼や期待も手に入ることでしょう。AI内製化へ、大きな一歩を踏み出すことができます。

その後は以下のような選択肢があります。
ここではじめて他社とのパートナーシップやデータサイエンティストなどの高度に専門的な人員の採用、人員拡充が可能になると思われます。
それぞれの選択肢の話は、またどこかで。

  • モデリングを専業のベンダに外注したり、専門的なデータサイエンティストを雇ったりすることでサービスの品質を上げる
  • 他のプロジェクトを立ち上げ、適用範囲を広げる
  • 自社データの基盤を少しずつ改善し、連続的にAIを用いたサービスを生み出せる環境を構築する

まとめ

  • AI内製化プロジェクトの最初期にデータサイエンティストだけ採用すると失敗する
  • プロパーであるプロダクトオーナーと中途ソフトウェアエンジニアのコンビがおすすめ
  • まずはプロトタイプで、会社にAIによるシステムが課題解決になると認識させる

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WRITER
Ryo Kaneoka

プランナー

金岡   亮 Ryo Kaneoka

複数の新規AI・データ活用サービスの企画およびPMを担当する。大手広告代理店様/メーカー様のビッグデータ活用の支援等の実績あり。   JDLA Deep Learning for GENERAL 2018、上級ウェブ解析士

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